第5話 プレゼントはここに
「ふぅ〜、快調快調♪」
「やっほ、コーキくん」
三限目の授業が終わった後の休み時間、ご機嫌でトイレから出てきた僕に先日の西条さんの友人Aさんが声をかけてきた。
「あ、どうも…」
相変わらずスカート短いな…。髪も染めて…うちの先生は何やってるんだ。
「最近ユーミとどう?ちゃんとやってる?」
「や…っ!ヤってるってどういう意味ですか⁉︎」
ギャルって急にそんなこと聞いてくるの⁉︎
僕やっぱりこの人たちとは仲良くできないかも!
そうやって驚きを隠せないでいると、Aさんは腹を抱えてゲラゲラと笑い出した。
「ははははっ…!も〜っ、そういう意味で言ったんじゃないし。万年ドーテーのキミにそんな早く無理でしょ」
「じゃ…じゃあ何が聞きたかったんですか…」
「仲良くしてる?ってことでしょ。どーせキミのことだから誕生日プレゼントとか迷ってるんじゃないかなって」
笑い泣きしたときに溢れた涙を指で拭きながらAさんは淡々と答えるが、僕は彼女のとある一言に疑問符を浮かべた。
「誕生日プレゼントってどういうこと…?」
「はぇ?もしかしてユーミが明日誕生日ってこと知らないの⁉︎」
「いやいや、そんなの初耳ですよ‼︎」
「それならプレゼントも用意してないってことだよね⁉︎」
「——そ、そうなりますね…」
僕の言葉を聞いた彼女は大きくため息をつき、僕の肩に手を乗せた。その空気の重さに僕も思わずゴクリと喉を鳴らした。
「もういい。付き合ったばっかりだから仕方ないわね…。それに今から選んでる暇もないし、ユーミの趣味とかまだあんまり知らないだろうから今回は何が欲しいか本人にさり気なく聞いてみなさい」
「分かった、ありがとう…!」
早速西条さんに聞きに行こうと思っていた矢先にチャイムが鳴り、僕はそのタイミングを失ってしまった。
・ ・ ・
そして気がつけば放課後になり、夕陽が紅く染める道を西条さんと二人並んで歩いている。
何が欲しいかさり気なく聞きなさい、という一言が僕にとっての足枷になり、なかなか話を切り出せずにいたのだ。
本人に悟られたらダメなんだよね…。
「あのさ、西条さん…っ!」
「どしたの、そんな真剣な顔して」
「今、何か欲しいものある⁉︎」
ダメだ、やっぱり遠回しに聞くなんてスキルはコミュ障の僕には無いよ‼︎
「……ん〜、学力とか?」
「へっ?」
「だってさ、コーキに教えてもらってばっかりじゃ申し訳ないし、逆に教えてみたいし?」
「そうじゃなくって!ものだよモノ!」
「う〜ん、急にそんなこと言われてもなぁ…。あーしあんまり物欲ない方だし…」
このままだと何を選べばいいのか分からなくなっちゃう…。
「最近流行ってるキャラクターとか、グッズとか何かない⁉︎」
「……もしかして、あーしの誕生日のこと誰かから聞いたの?」
「えっ、いやっ、その…」
「ごめんね、隠してたつもりじゃなかったんだけど、付き合ったばっかりだし急に言って困らせたらヤだなって思って言わなかったんだ」
——僕に気を遣ってくれてたんだ。
やっぱり彼女はとても優しくて、いつも僕のことを一番に考えてくれている。だからこそ、その気持ちに甘えるのではなく、しっかりと彼女を喜ばせたいと思った。
「……でもさ、コーキがプレゼントくれるって言うなら欲しいのが一つあるんだ」
「何でも言って!」
「ここ。ここにプレゼントが欲しい…かな」
そう言って彼女は自分の頬を指差し、僕の顔をじっと見つめた。
「頬っぺたがどうしたの…?」
「ん〜もう…っ!キスしてほしいってことでしょ!…女の子にそんなこと言わせないでよ…ばか」
「き…きす…っ⁉︎」
想像を遥かに超えた返答に戸惑いを隠せなかった。しかし、彼女を喜ばせたいと思ったことは事実。西条さんが望むなら僕は…‼︎
「西条さん…っ!」
鼓動が激しく、今にも心臓が飛び出しそうになっているのを感じながら、僕は目を閉じてそっと顔を近づけて口づけした。
「——へたくそ。そこはほっぺじゃなくて目の下だし」
「ごめ…っ!」
「でも、一日早い誕生日プレゼント貰っちゃったね。ありがと、コーキ」
そうやって笑みを浮かべる彼女の顔が赤く見えたのは夕焼けのせいだろうか、それとも——
ちょっぴりギャルなカノジョ TMK. @TMK_yoeee
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