第3話 龍と少年と少女


「おや、珍しいね、こんな場所に少年と少女か」


穏かな声に少年とと少女は驚いて振り返る。


そこにいたのは穏やかな雰囲気の金髪の青年。紅い瞳にどこか高尚な雰囲気の近代的な恰好をしている18ほどの青年だろうか。


「怯えないでいいさ、食べたりはしない」


「あなたは?」



少年は警戒を続けながら声をかける。


「俺か、俺の名前は月天、なあに、しがない人間生活も知る龍さ」


目の前の男月天はにこやかに微笑んだ。



少年は警戒を更に高めた、龍とは生態の中でも最上級に位置する災害とも呼ばれるランクオーバーの化け物。


しかも人化し、人間生活を知るほどの龍、知性も高く、自分の鑑定も効かない。敵対すればそれこそ。



「まあ、この世界の龍は自然災害よりも怖いと言われてるもんなあ、警戒は正解だ、少年、だが、疲れ果てた状態で挑むのはかしこくはないな、それに妹さんか、その子も限界だろう、名は名乗ったんだ、君達の名は?」



「アレク、妹はアセラ」



「いい名前だねえ、とりあえずここにいる魔物は全部屠ってある、とりあえず飯にしよう、話はそれからだ」


なんてことのない会話であるが、少年、アレクは毒気が抜かれて妹と共に月天と名乗った龍の青年についていくことにした。


「ここは?」


「ああ、スローライフがしたくて開拓したんだよ、今住んでるのは俺と女の子と酒狂いか」


「あら女の子っていってくれるのは嬉しいですね」


ふと現れた修道女にアレク達は驚く。


「驚いたでしょう、月天様がこの村をつくったんですよ」


言うなれば現代版の村を作り上げたというところか、月天は地球の知識も合わせて魔法と魔術を重ね合わせてある種の最新の村にしてしまった。


下水道も完備し、まだ人はいないがログハウス仕立ての民宿、ゲストハウス、きちんとした水車に品種改良した野菜と果物がある畑。


ゴーレムといわれる自立式の魔道機械、武器屋に商店に屋台、あきらかに移住目的を目指しているというのがまるわかりだ。


そしてゲストハウスにいて出されたのは


「はじめての外部のお客さんだから、張り切ってしまったけどどうかな?口に会うといいけど」


自分の鑑定結果を見てアレクは唖然としてしまった。


ジュージューと焼けるバターの香ばしい匂いに、肉厚のステーキに真っ白い白米。鑑定の技能がなければ誰もが美味しいステーキですませただろう。だが目の前にあるのは。



鑑定結果

炎熱竜のステーキ。

絶界の中でももっとも最上位に位置する成龍を倒し肉を焼いたものを。

食せば寿命は10年延び体力筋力強化につながる。

塩コショウで焼いたシンプルな味わい深いステーキ


白米に至っては


鑑定結果


神米


農神が生み出した稲から作り出された至高の白米

生命力を高め魔力を倍増させる



どう考えても最希少ランクの依頼に掲載されそうな品物ばかりだった。


そんな食事をしながら月天さんの質問に答えることにした。

もし敵対をするならば炎熱竜、おそらくAランク相当の冒険者が倒せるほどの竜を料理できるほどの腕前を持つ人物であればアレク達はおそらくここにはもういないだろう。


アレク達は聖剣の護る名もなき村の子供たちだった。

神が産み出す奇跡の剣。

時代により多く産み出される時もあればただ一振りの剣として産み出される時もある。


そんな一振りの剣と産み出されまだ誰も勇者として認められずに祭壇に鎮座していた剣。


いわゆるこの世界の半分を支配しているという帝国と呼ばれる多くの勇者を内包している国。侵略を通して世界を変えようとする国。


アレク達はそこで滅ぼされた。


村も家族も今あるのは鞘におさまる聖剣と妹のみ。



「大変だねえ、だがその聖剣目覚めてるね、いじわるはやめたらどうだい?」


月天は珈琲をのみながらにこりとほほえむ

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