第2話 隠した美貌
俺、
俺の席の隣、つまり一番うしろの窓際の席にとんでもない美少女が座っているのだ。
彼女は前髪を水色のヘアピンで止め、髪は肩まで伸びており、雪のように白い足は長くすらっとしていて、出るところはしっかり出ている。
学校一とか言うレベルじゃない。たぶん、雑誌に載っているモデルと比べても引けを取らないだろう。とにかく、めちゃくちゃ可愛いのだ。
そんなことより、一体なぜそんな可愛い少女が俺の高校の制服を着て隣の席に座っているのか。
呆然としていると、その少女がこちらを向き、目を見開いた。
「えっっ!?なんで小野山くんがここに!?!」
ん?小野山くん?なんでこんな美少女が俺の名前を知ってるんだ?しかも、くん付けで?
机の上をよく見るとノートと国語の教科書がひろげられている。
しかも今日習ったところだ。え?なんでこんな可愛い子が藤崎の席で勉強してんの?
しばらく、お互いに状況が読み込めず硬直していた。
先に動いたのは、彼女だった。
焦ったように机の上の筆箱の横に置いてあったメガネを取って掛けた。
それも様になっている。ものすごく可愛い。
それはもう学級委員系のしっかりした美少女といった感じ。
今にも『宿題はまだですか!』とでも言いそうだ。
次にヘアピンを取り前髪をおろした。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!?」
正直に言おう。めっちゃびっくりした。
藤崎の席に座っていた美少女は、なんと俺の席の隣の女子だった。
名前を
「ふ、藤崎さん?……」
「っ!…見ないで!!!」
藤崎は顔を真っ赤にして俯いた。
その恥ずかしそうな仕草すらも可愛く見えてしまい、俺はどうしたらいいのか分からなくなった。
家に帰ってからも、藤崎がなぜあのような美貌を隠しているのか不思議でならなかった。
翌日
学校に行ってからも、藤崎のことが気になりすぎて授業は全く入ってこなかった。
それは藤崎も同じのようで、五回に一回くらいの確率で目があった。
そのたびに藤崎が顔を赤くしてうつむくものだから、ドキドキして仕方なかった。
どうせ家で取り出すことはないであろう課題をリュックに詰め込み、それを肩にかけたところで後ろから声がかかった。
「小野山くん…ちょっと、時間ある?…」
振り向くと、うつむいた藤崎の姿があった。
誰かと話すとき、藤崎はいつもうつむいている。もしかすると、これが人と話すときの彼女のスタイルなのかもしれない。
そんな事を考えていると、返事がないのを不安に思ったのか藤崎が上目遣いでこちらの様子を伺っていた。( ゚∀゚)・∵. グハッ!!
よく見たら仕草とかもめっちゃかわいいじゃん!あーもう、ドキドキするなぁ、
それでも平静を装って
「ん、どうしたの?」と聞いてみる。
「ちょっと…話が、時間ないならいいんだけど…」
まぁ、たぶん昨日のことだろう。一体何を言われるというのか…
ちょっとだけ不安である。その気持ちを隠しつつ答える。
「あ、いや大丈夫だけど。場所変える?」
「うん、ありがとう…」
そうして、俺達は中庭に移動した。
俺達は、グリコみたいなポーズをした銅像の横にあるベンチに並んで腰掛けた。
ベンチは銅像の横の大きな木で日陰になっていて風が涼しかった。
しばらくして、藤崎が口を開いた。
「えっと、昨日の放課後のこと、なんだけど…」
案の定、昨日の藤崎の素顔を見てしまったことについてだった。
「やっぱりそのことだよね」
俺がそう言うと、藤崎はこくんとうなずき、
「うん、あのことは絶対に誰にも言わないで」
ときっぱりいった。意外とこういう話し方もできるんだな。
というかなんでなんだろう。
極端な話、ものすごく顔がブスいから言わないでほしいというならまだ分かる。だけど、実際藤崎の場合モデル級に可愛いのだ。なんで言ってほしくないのかわからない。
「なんで知られたくないの?」
頭に浮かんだ疑問をそのまま投げかけた。すると、
「それは、その…」
うつむいて、口ごもってしまった。
ほんとに言いたくないんだろう。ていうか、沈黙が気まずい。
「別に誰にも言わないし、理由も言いたくないなら言わないでいいよ」
とりあえず、この沈黙を破りたくてそう言うと、藤崎はバッと顔を上げ、胸に手を置いて深く息を吐いた。
目は前髪が覆っているせいでほとんど見えないけど、これはたぶんめっちゃ安心してる。なんか感情だだ漏れだな。意外と、感情は豊かなのかもしれない。
それ以上の会話はなく、教室へと戻った。結局、俺の疑問は解決することはなかった。教室に着いて前のドアをくぐり、自分の席に目をやると、人が座っていた。何やらスマホを両手で構えて奮闘している。
今は占領されている自分の席に歩み寄り、それにデコピンを食らわせながら話しかける。
「一体お前は人の席勝手に使って何してるんだ」
そいつはおでこに俺のデコピンを受け、後ろに大げさにのけ反りながら答える。
「痛っー!ゲームだよゲーム!お前こそ人がくつろいでるときに奇襲しかけんな!」
「いや、勝手に人の机でくつろぐなよ」
「うあー、いつも通り辛辣ぅー!」
「うるせえだまれ、万年ナンパ失敗男」
「うわぁひでぇ、泣くぞ」
「泣け」
あ、ちなみにこのうるさいのは俺の学校内の数少ない友達である。
名前は
「てか、浩介、お前藤崎となに話してたんだ?まさか告白!?いやないな」
「告白じゃねえよ!あとその言い方やめろ、自分で否定するの悲しくなるわ!」
「抜け駆けは許さないぜ、抜け駆けしたらぶん殴ってやる!」
光希が無駄にカッコつけて言う。
「くッ…悪かった心ゆくまで殴れ」
「殴らねえよ!!!俺には彼女なんてできないって言いたいのか!」
「えっ、できるの?」
「斬首ぅぅぅぅぅう」
そんな事を言いながら、学校を出て帰路に着く。
その途中、売店で買ったメロンパンをリュックから取り出して食べていた。
このメロンパン、他の菓子パンが140円程度なのに対し、200円もする高級な代物である。サクサクのクッキー生地に中のふんわりとしたメロン香るパン生地が絶品なため人気がある。しかし、生徒もたまにしか買うことが許されない自分へのご褒美だ。
すると、ふと光希が言った。
「浩介ってさ、」
「ん?ほうひは?(ん?どうした?)」
「好きな人いねえの?」
「ブホっっっっッ!!?」
思いっきりメロンパンをぶちまけた。
「うお!?きたねえ!」
「急になんてこと聞くんだ!!!俺のメロンパンどうしてくれる!」
「いや、そんな変なこと聞いてねえだろ!で?どうなんだよ」
「う〜ん、そうだなぁ…」
しばらく考え込んでいると光希が
「お前まさか恋愛にまだトラウマ残ってんのか?」
と、神妙な面持ちで問いかけてきた。俺はあごに手を当てながら答える。
「あぁ、ちょっとな」
俺は、未だにトラウマになっている中1,中2のとき、つまり4年前のことを思い出した。
あとがき
どうも、たからよもぎです
第2話も読んでいただきありがとうございます!
良ければ応援とコメントよろしくおねがいします!
それでは次は第3話でお会いしましょう!
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