第25話 牙を剥く三姉妹

「よっしゃあ。第二のカギもゲットしたのだー」


 魔法陣から現れた第二の魔物を倒し、デリオン姫がカギをゲットした。


「やりましたね。デリオン姫様」


 デリオン姫は順調に、ダンジョンの出口のカギを手に入れていく。あとひとつ手に入れば、ダンジョン突破である。 

 

 ダンジョンは短い構造で、ボス部屋を次々と攻略するタイプのダンジョンのようだ。

 お嬢様学校なのに、ダンジョンの仕組みが漢らしいな。

 

「うーん、モモ、嫌な予感しかしないのは、ウチだけかしら?」


 はるたんが、あたしに問いかけてきた。


「いや。あたしも同じことを考えていた」


 スムーズに進んでいるときこそ、危険のセンサーを働かせるべき。「もう少し」は「もう遅い」。石橋は砕いて、そのガレキで川を渡れ。


 ダンジョンにおける鉄則だ。慎重すぎるに、越したことはない。


 だが、二人はピクニック感覚でちょっと浮かれている。


 ダンジョンの恐ろしさを身につけるべく静観しておくべきか、それとも手助けをするか。


 あたしは、二択を迫られている。


「『自分の力で勝ったのではない。ジャケット・ギアの性能のおかげで勝ったのだ』ってことくらい、あの二人だってわかってるわよ」


 だよね。もしそうだったら、あたしたちなんて無視して独断専行をしているはず。

 

 二人だって、わきまえていた。そそくさと先へ先へ進まず、あたしたちに意見をうかがってから進む。ビビリなのは、変わっていない。


「三姉妹が、黙ってるわけがないじゃない。ウチは、ずっと警戒しているわよ」


「まあ、いざとなったらあたしが手を貸すから」


 初心者にダンジョンのヤバさなんて教えても酷、ってものだ。


「頼むわよ。あたしは別行動で、魔王の友希那を探すわ」 


「一人で平気なん? はるたん」


「ウチだって、これでも魔王経験者だからね。当たりは付けてるわよ。それじゃあ、二人をお願い」

 

 さすがに危険を感じたのか、はるたんがあたしたちと別れる。


「やったのだー。三つともカギをゲットし――」


 割と強かった第三の魔物を退治して、姫がカギを手に入れた瞬間だった。


 くねくねとした白い物体が、ジャケット・ギアを破壊したのである。


「わああー」


 ジャケット・ギアを失い、姫が地面に尻餅をつく。


 襲撃者が、姿を見せた。やはり、愚地おろち三女の青葉あおばである。

 

「大丈夫ですか、姫!?」


 さっきまで小さい姿だった綿毛が、人間サイズに変化する。

 

「なんとか、平気なのだ」


 オシリをさすりつつ、デリオン姫が立ち上がった。


「でも、キラーに倒されちゃったのだ」


「医務室なんて、行かなくていいよ。勝手に出口で、待ってたらいいじゃん。ダメージはないみたいだし」


 青葉は、二人を相手にしない。


 よく言えば、見逃してくれた。悪く言ったら、邪魔なだけって感じているように見える。

  

「お前さんたちは、出口で待ってろ! ここは、あたしがやる」


 残りの敵は、三姉妹だけだろう。だったら、リーダーの仕事だ。あたしたちだけで戦う。

 

「見逃してくれてサンキュな」


「バカ言わないでよね。医務室まで運ぶ手間が面倒だから見逃した、ってだけ。あんたとは、早く戦いたかったからね」


 青葉が、武器を手にする。蛇腹剣……いや、あれは槍だ。


「三節棍だな」


「うん。これに巻き付かれて、くたばらなかった冒険者はいないさ」


「じゃあ、あたしが最初の一人になってやんよっ」


 相手に合わせて、あたしもスコップを取り出す。【武装開放】して、スコップを魔剣【ドラゴンキラー】に変えた。


「ずっとあんたと戦いたかったんだよ。七星ななほし 洲桃すもも。最強は、ボクの称号だからね」



「さっさと倒れてよね。でさ、試合終了までいっしょに医務室でイチャイチャしよう」


 あー。そっち系の、趣味をお持ちの方でしたかー。

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