第三章 アウェー戦! 今度はこっちが攻め込むぜ!
第20話 ダンジョン部の休日
「はいはい、らっしゃいらっしゃい! はい二番テーブルさん、ビールお待ちー!」
あたしはダンジョン部が休みのとき、実家である店を手伝う。
「おやじ、チャーハン三つ!」
「あいよー……ほらよ!」
オーダーを聞いた直後、父は秒でチャーハンを作り上げた。
息をつく暇もなく、あたしはチャーハンを持っていく。
『ダンジョン飯店 ほしや』は、町中華系のダンジョン飯屋だ。
客は冒険者ばかり。商店街の地下にあるダンジョンから、続々と人が集まってくる。
ここはオヤジの炎属性魔法を駆使した、『直火チャーハン』が売りだ。土日祝じゃなくても、行列ができてしまう。
といっても、客はすぐにパッと食べて帰っていく。「長居禁止」のルールもあり、サイクルがものすごいのだ。
「らっしゃーい。ってお前らかよ!」
「いいじゃん。空いている時間帯を狙ったんだから」
はるたんが、来店した。「デリオン姫」こと
「おいモモ! ここはいいから、お友だちとメシ休憩に入れよ」
父が、あたしに「休んできな」という。
「いえ、あの、お代は出しますので」
「水くせえこと言わねーの、
実際、父のいうとおりだ。その代わり、父は仲間の店へ飲みに行くとおごってもらう。持ちつ持たれつなのだ。
「では、ウチの系列店にいらしたときは、好きなだけ召し上がってくださいませ」
目いっぱいの外面で、はるたんが父にあいさつをする。
「ほらよ。チャーハン四人前」
秒で、父がチャーハンを作り上げた。しかもすべて、ミニラーメンと餃子つき。
「はい、おまちどー」
あたしをロングヘアにしたような少女が、料理を持ってきた。
「ありがとうございます。えっと、モモさんは六人きょうだいなんでしたよね?」
「去年、七人になったよ。今のは下の姉ちゃん。大学生だよ」
姉、兄、姉、あたし、弟、妹、弟の順番である。
長女と長男は社会人で、家を出た。
姉も家を出ているが、たまーに我が家を手伝う。
中学生の弟は、母とともに小学生の妹と、産まれたばかりの弟の面倒を見ている。
「家族全員でさ、一番下の子を病院へ迎えに行ったんよね? ウチも連れて」
「そうそう! 妊婦さんから、『姉の子では?』って疑われたもん」
あたしは、ガハハと笑った。
「つーか、あたしらきょうだい、ひょっとしたらカーチャンから産まれてなかったらしい」
「ほんとなのか?」
あたしが事情を話すと、デリオン姫が目を丸くする。
「まじか。最初はお母さんのお友だちをナンパしたと」
「で、カーチャンがキレて、ケンカになったんだって」
最初はお互いの第一印象、最悪だったらしい。
しかし結果的に、父と母は結ばれ、あたしたちが産まれた。
「で、なんの用事だ?」
あたしは、はるたんの口にチャーハンのレンゲを運ぶ。
「実はさ、また予約が減った」
あむあむと言いながら、はるたんがなんとか聞き取れる声で話す。
「またか」
あたしたちは優勝候補であるエドワード女子、通称「ドワ女」を倒した。そのことで、
「ダンジョンが思いの外難関であると気づかれ、挑戦者が激減したようです」
「そうなのだ。ちょっとやりすぎたのだ」
綿毛がデリオン姫のラーメンを、ふーふーしてあげている。
「まあ、負けたらダンジョンを明け渡すって代わりに、こちらも相当のリクスを背負わせるからなー」
「ねー。この間の風魔ルールダンジョンだって、
あたしたちに負けた巳柳から、はるたんはダンジョンコアを一つ分けてもらったのだ。「バリエーションがほしいから」と。
「そういうリスクもあるから、なかなか挑戦者が現れなくってさ」
「で、どうするよ?」
「決まってんだろ。こちらから打って出ることにするんだよ」
「マジか」
ホームがダメなら、アウェー戦をしようというわけか。
「えらいノリノリじゃん? ダンジョンなんて、っていっていたじゃんか」
「ウチはモモが楽しそうなら、それに便乗するだけ。モモが楽しくなることをやろうよ」
「あたしはいいんだよ。どこでも楽しいから。でも、デリオンとかはしんどくない?」
戦力であるあたしはともかく、デリオンはロクにダンジョン攻略のレクチャーなんて受けていない。むしろ攻略側がダメだったから、ウチが「ホーム専門」としてスカウトしたくらいだ。戦力としては、考えていない。
「この二人は数合わせだから、気にしないで。姫と綿毛を守りつつ、ウチとモモの二人で戦おう」
デリオン姫にはダンジョンの仕組みを分析してもらって、綿毛には偵察などを任せてもいいかもしれない。
「よっしゃ。腕がなるねえ」
よその学校が、どんなダンジョンを仕掛けてくるかも、気になる。
今から、楽しみになってきた。
「じゃあ、そういうわけだから。お邪魔しました」
三人が、去っていく。
あたしはエプロンを付け直して、接客に戻った。
はるたんたちと入れ替わるような形で、また学生風の二人組が。
「らっしゃ……せ」
そこには、パニさんにおんぶされながら入店してくる、トロちゃんの姿が。
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