第11話 ダンジョン部の課題

 あたしは初ダンジョンで、はるたんと相討ちになった。生まれて初めて出会う、魔法を使う相手に。倒したものの、こちらも深手を負って気絶したのである。


「ケンカで負けたことがなかったのに、はるたんには盛大に負けてさ。あたし悔しくなって。オヤジにダンジョン攻略の手ほどきを受けてさ。で、今に至るんよ」


「それは、ウチも一緒だった。ウチはそれまで、大人が相手でも敵なしのダンジョンマスターだった。それが、同い年の子どもに負けて。勝負には勝ったけど、ウチは負けた。モモって名前をすぐに覚えて、トレーニングに励んだよ」


 当時、はるたんとは敵同士だった。そこから仲良くなって、今でもつるんでいる。


「お互いが切磋琢磨し合って、その無類なる強さを手に入れたんですわね」


「巻き込まれた側は、たまったもんじゃなかったけどね」


 はるたんも当時を振り返り、ため息をつく。


「数奇なめぐり合わせですわね」


「はるたんのオカンからしたら、あたしとはるたんを巡り合わせたかったみたい」

 

 今となっては、はるたんはすっかりダンジョンに興味を失ってしまったようだが。幼い頃から、ずっと「ダンジョンマスターをやらされていた感」はあったけどね。


「ごちそうさまでした、モモさん。はるたんさん。貴重なお話を聞けて、楽しかったですわ。今度は、うちにいらしてくださいな。といっても、まだ二人しかいないんでしたら、公式試合にも出られませんわよね」

 

「そこなんだよなあ。あと二人仲間がいれば、公式試合に行けるんだけどー」


 あたしとはるたんなら、オフェンスだけなら二人だけでも戦える。

 

 問題は、ディフェンスだ。

 一応ダンジョンマスターとキラー役さえいれば、あとは魔物で代用できる。とはいえ、魔物だけだと心もとない。

 あたしとはるたんの二人で戦い続けられるほど、ダンジョン部の活動は甘くないのだ。負ける気はしないが、公式がそれを許さない。

 やはり、あと数名の部員が必要である。

 

「当面の課題は、部員探しだね」


「ですが、発表されて間がないんでしたら、部員もなかなか集めづらいのでは? 金盞花きんせんかにダンジョンはないものだと入学されたからばかりでしょうし」


「どうにかするよ」


「ええ。外様の我々が気にしても、仕方ありませんわよね。では、巳柳みやなぎにいらしたときに」


 愚地おろちたちが、帰っていった。


「部員かー。はるたん、心当たりはある?」


「一応は。というか、隠れている間はずっと部員を探してた」


 隠れ場所の視聴覚室で、堂々とPCを立ち上げていたらしい。

 

「まじか。よく見つからなかったな」


「光が出ない【ダークゾーントラップ】を仕掛けたから、みんなビビって入ってこなかった」


 巳柳高校よ、こういうところが勝てない要因なんだぞー。


「で、めぼしいやつは?」


「戦力にならない相手なら」


「いい、いい。問題なし」


 頭数だけいればいいから、あたしは特に戦力を必要としていない。

 最悪、そいつらにダンマスをやってもらったらいいのだ。そしたら、あたしとはるたんで暴れることができる。


「OK。でも、ダンジョンにはかなり詳しいよ。今の学園対抗戦にも精通してる」

 

「で、そいつはどこに?」


「掲示板」


「書き込みしてんの?」


「むしろ管理人。VTuberだし」

 


(第一章 おしまい)

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