第10話 はるたんとの出会い

「負けましたわ……」


 練習試合が終わると、愚地おろち 三澄みすみは人が変わったようにしおらしくなった。


 愚地たち巳柳みやなぎ高校の生徒に、あたしはチャーハンを振る舞う。夕飯前だから、一人前を数人で分け合ってもらった。


 あたしたちも、チャーハンをいただく。


「このチャーハン、おいしいですわね」


「オヤジから習ったからな」


 あたしは、はるたんにチャーハンを食べさせる。


 はるたんは母親に似て、料理があまり得意ではないのだ。一族全員、ダンジョンしか知らないお嬢様たちだから。


 庶民の味を作れない代わりに、お取り寄せなどは金盞花グループに完全お任せだ。


「モモ、どうやって毒を切り抜けたの?」


 はるたんが、あたしに問いかけてきた。


「そうですわ! わたくしも知りたいです! あの毒は、象さえ卒倒させるのに!」


 愚地も、身を乗り出す。

 

「【漢方の心得】ってスキルが、あったからな」


「なるほど。いわゆる毒耐性スキルか」


「あたしの予算だったら、それが限界だった」


 飯店でも調理をするから、必要に迫られたのだ。 

 スキルポイントが貯まったら、耐性面も強化していいかもと思った。愚地のようなタイプが相手だと、攻撃系のスキルばかり増やしてもゴリ押せなくなってくる。

 

「それにしても、モモさん。スカートがめくれても、まったく動じずに回し蹴りなんて。金盞花きんせんかの生徒さんでしょ? 恥じらいはありませんの?」

 

「見られるのが恥ずかしいからってスパッツを履くらいなら、見えていいパンツを履く」


 暑がりなあたしは、スパッツの重ね履きが苦手だ。ならば見えてもいい、紺のスポーツショーツを履いてりゃいいかと。


「今日は紺色だけど、たまに黒のときもある。だいたい寒色系かな」


「モモさんって、豪胆な方ですわね」


「横着なだけだよ。あたしは」

 

「モモさんがダンジョンに興味を持ったきっかけは、なんでしたの?」


「オヤジが冒険者を引退して、飯屋を始めて少しして、あたしが生まれたの」


 物心ついた頃から、あたしは店番をしていた。冒険者という単語すら、わからずに。


「小学校三年の頃だったかな? 客の一人が、接客中だったあたしのケツをなでたのね」


 それでコラー、コノヤローっていったら、ソイツがダンジョンマスターだとわかった。


「でね、ダンジョンまで言ってそいつをとっちめたの」


「まあ、おっさんにオシリを触られなかったら、最強の中学生ダンジョン探索者は生まれなかったのですね」


「いや。撫でできたのはおばさんだったんだよね……」


「今でも名前を覚えてるよ。金盞花きんせんか 小春こはるっていうんだよ」


「金盞花 小春といえば、当時ママさんダンマス最強だったとされる……」


愚地が、はるたんに視線を向ける。


 はるたんは、あたしが近づけたレンゲをパクリ。

 

「そう。はるたんのオカン」

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