第二章 新入部員は戦力外VTuber

第12話 ダンジョン掲示板管理V ―配信回―

「はいはいはーい! ダンジョン掲示板を管理する系VTuberの、【ダンジョンプリンセス・デリオン】でぃーす! いえいいえいいえーい! そして、こちらのちっこい毛玉の精霊ちゃんは、と。自己紹介をどうぞー」


「アシスタントの、綿毛わたげです。デリオン姫! 相変わらずテンションが高いですね! 見た目は前髪をアホ毛状に結んだ、貧乳ゆるキャラなのに」


「はいはいはーいっ! 今日はいつもより、はるかにハイテンションでお送りいたします! 今日はいいことがあったので!」


「やはり知っていましたかっ! わが金盞花学園に、ダンジョン部ができたってことを!」


「もちろんよー。もちの、ろんよー。ちゃんとチェックしておかないとー、掲示板の管理人とは言えないのだー」

 

「白熱しましたよねー掲示板も!」


「そうそう。盛り上がってた。見てこの『やったー』って弾幕を。あーうち、スパチャ飛ばせないんで。『どうして飛ばせないんだ!?』と言われても、メンバーシップ入ってくださいってスタンスなので」


「ウチはコメントの公平さを必要とするため、スーパーチャット禁止です。有料会員制掲示板なんです。あしからず」


「荒らし対策も、兼ねているのだ」


「そういうのは、黙っていましょうね。姫」 


「話は変わって。金盞花きんせんか学園がダンジョン部を立ち上げる話ってのは、結構昔からあって。それでも、校長は許可しなかったのだ」


「実力が試されますからね。『軟弱なダンジョンマスターなんていらんわ、って感じ?』ですか。そうですそうです。本人に聞いたら、そういうことらしいですよ」


「ていうか、孫の晴子はるこちゃんが成長するまで、待っていたっぽいのだ」


「晴子さんのお母さんは、学生時代、よその学校でダンジョン部だったんですよね?」


「そうなのだ」


「『オカンが金盞花小春こはると戦ったことがあるけど、強かったって』と。やはりそうでしたか」


「『学園じゃなくて、金盞花一族自体が強いと、娘の代で証明しちゃった感じ?』か。そうそう。そのとおりなのだ」


「その金盞花校長の孫娘と、七星ななほし 洲桃すももさんがタッグを組むっていうね」


「勝って当然だったのだ。相手の高校はリーダー以外、二軍だったし」


「最後も二人じゃなくて、ユニコーンくんのタックルで、決着がつきましたからね」


「言っておくけどなあ、ユニコーンくんって強いのだぞ! おめーら、バカにしてっけど! 本当だったらAクラスの召喚獣なのだからな!」


「そうですよ。で、巳柳高校の様子がこちらになります。公式から、動画をお借りしました。一応ね。すべてのダンジョンアタックは、録画されることになっていますから。うちにも公式記録として残っておりましてね。では、どうぞ」



 

『きゃー』


 


「ほらあ。第三チェックポイントに入った瞬間、ユニコーンくんに突撃されて全滅ですわ」

 

「まだダンジョン部に入りたての女子高生なんて、こんなもんなのだ」


「で、そのユニコーンを秒殺した動画が、こちらになります……うわあ。マジで秒殺ですね」 

 

「な? ユニコーンを秒殺できる、金盞花晴子と七星洲桃がヤバイんだって!」


「ですよねえ! あの二人を基準にしたら、ダメですって」


「かたや魔王一家の、秘蔵っ子。かたや冒険者のトップ、『勇者』の娘だぞ」


「とはいえ、今は部員を募集したいそうですよ」


「まあ、我々には関係ない話なのだ」


「ですよねええ」


「では、時間が来たのでここでしめくくるのだ」


「また次回、お会い致しましょう」

 


 * * *



 あたしは校舎の視聴覚室で、放送部の配信が終わるのを待っていた。


「あんたらに話があるんだけど」


 視聴覚室でVTuber配信をしている生徒に、向き合う。


「はるたん、この二人が新入部員候補なん?」


「そう」


 デリオン姫こと【弾堂だんどう リオン】は、前髪をアップにして頭の上で結んでいる。


 ショート銀髪のサイドポニテが、綿貫わたぬき 不二菜ふじなだ。耳が長い。


「綿貫さんって、エルフなん?」


「はい。というか、どちらもエルフです。こちらはエルフ国の姫で、私は従者です」


 おまけにどっちも一年で、あたしと同級生らしい。

 

「我々のことは、【デリオン】と【綿毛】でいいのだ」


「はいはい。それでいいよ。で、相談なんだけど」


 あたしは、入部の話を切り出す。

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