第11話 ネメア
魔獣の集る見張り塔に突撃してから、一体どのくらいの時間が経過したんだろう。
魔獣を倒しても倒しても、魔獣の森側から、次から次にと魔獣が引き寄せられてくる。
明らかに異常事態だった。
それでもなんとか、兵士達と協力をしながら、1匹、1匹、目の前の敵を倒していく。
途中で見張り塔の門は、なんとか閉じることができた。
あとは壁の内側に入り込んだ魔獣達を倒すだけ。
――倒すだけ、なんて量じゃないけどな。
制圧した見張り塔に背を預け、領地の内側に入り込んだ魔獣を倒していく。
青黒いデカいネズミのようなアーヴァンクに、一見普通の犬と見分けがつかないが獰猛なガルム。幼児の鳴き声で人間を惑わす姑獲鳥。
全くつながりのない魔獣達が、いたずらに大量に集まっている。
俺ですら知らない種類の魔獣もいて、いっそ笑える。
シリウスさまーーーーー!! ウギャーーー!!!
その時背後から、複数人の悲鳴のような声が聞こえた。
俺はその声が、人間が死ぬ前、最後に出す断末魔の叫びだという事を知っている。
背中側から、ビリビリとしたとんでもない威圧を感じる。
目の前の魔獣達から一瞬目を逸らして、後ろを振り返る。
その時見た光景は、再び見張り塔の門を壊して入ってきた、めったにお目にかかれない獅子の魔獣ネメアが、俺に向かって突進してくるところ。
――あ、これは避けられない。
限界まで集中した頭が、冷静に判断した。
意識だけが冴えわたっていて、ネメアの動きがゆっくりとして見える。
だけど自分の体の動きも恐ろしくノロくて、到底攻撃を避けられそうにない。
――俺は死ぬのか。魔獣に襲われて死んだ、父上みたいに。
色んな記憶が、一気に脳裏をよぎる。
まだ魔獣と戦うなんて想像もつかなかった幼い頃、母上に絵本を読んでもらった日々こと。
忙しい父上が、たまーに訓練をつけてくれたこと。
父上の側近の息子の、仲の良かったお兄さん――バトラーが、ある日急に同じ屋敷に住み始めて、本当の兄のようになったこと。
それから、それから――
『サラ、ごめん。愛している』
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