新月の夜・おまけ 〜素が出る朝〜



○鬼の国にある、巫女が住む和風な家・寝室(朝)

    2人が一緒の布団で寝ており、聞き手が先に起きる。

    琴奈が昨夜と同じ位置で寝落ちしている設定のため、

    聞き手の右側、⑦スタート。

    琴奈は素が出るため鬼っ子口調ではなく、標準語。

   (SE:鳥の囀りなど、朝の環境音)

   (SE:聞き手が身動きする音)


⑦「(寝息)すぅ……すぅ……」


   (SE:聞き手が起き上がる音)


⑦「うぅ…………あれ?」


   (SE:琴奈が身動きする音)


⑦「ここ、どこ?

  ワラワの部屋じゃ……ない?」


    聞き手:おはよう。


⑦「えっ……お、おは……よう?」


   (SE:琴奈が身動きする音)


⑦「え、あれ、待って。待って待って待って待って⁈」


   (SE:琴奈が着物の前を隠す身動き音・衣擦れ音など)


⑦「み、みた? 着物……はだけてたよね?」


    聞き手、沈黙。琴奈、慌てふためく。


⑦「う、うそ。

  なんで。どうして⁇

  あれ、昨日お主を寝かせてから……

  もしかして、ワラワ……寝落ちしちゃった?

  え、待って。はだけた姿見せたのも問題なのに。

  い、一緒に寝ちゃったってこと⁇

  え、てか、寝顔をみられたってこと?

  化粧もしてない顔を⁇ 明るい部屋で⁇

  えっ? っふぇ?

  ……やだ。やだやだやだやだ⁈⁈

  こ、こっち見ないでぇ‼」


   (SE:琴奈が聞き手に覆い被さる音)

   (SE:2人が布団の倒れ込む音)

    琴奈が勢いよく聞き手の頭を抱き締めるため、⑦から①。

    琴奈の胸に聞き手の頭が埋まっている状態。琴奈が早口で言い訳をする。


①「違うの。これはその、望んでしたことじゃなくて。

  昨日はお主が寝られないって言ってたから心配で。

  それで一緒に寝てただけで、決してふ、深い意味とかはなく。

  ちゃんとお主が眠ったら部屋に戻るつもりだったから。

  流石にワラワも幼馴染みとは言え、

  お客さんであるお主の部屋に忍び込むのは悪いと思うし。

  あ、お客さんってあれだよ? 他人って意味じゃないからね⁇

  確かにお客さんで居候だけど、赤の他人ではないし、

  家族みたいに接してきたから安心してほしいっていうか。

  仲間外れとかそういう意味じゃなくてね!

  仲良くしてる人の子に夜這いとかしたらダメだよねって話っ‼

  ほ、本当にちょっとした好奇心で……。

  ただお主の顔を眺めてたら寝ちゃったって感じだし……」


    聞き手:眺めてた?

   (SE:琴奈が聞き手の肩を激しく揺さぶる音)※次の台詞と連動


①「……あ。あ、あぁあああああああああああああ。

  違う違う違う。違うよ? 違うから。

  今のなし。お主は聞いてない。何も聞いてないから。

  ねぇ? 何も聞いてないよね?

  ねぇー⁈ お主はなーにも聞いてないよねぇ⁇

  ワラワは何も言ってないし、お主もなーにも聞いてない。

  昨夜は何もなかった。そうだよね? 

  お主の答えは1つ。『はい、そうです』って言うだけ。

  それだけでいいから。そう言ってくれる? てか、言えッ‼」


    聞き手:流石に無茶というか、口調が昔の……。


①「うきゃああああああああああ‼

  口調が昔に戻ったとか言うなぁ‼

  いいから忘れろぉおおお‼」


   (バックSE:琴奈が枕で何度か聞き手を叩く音・優しく)※開始


①「忘れろ忘れろ忘おれろ忘れろっ‼」


    聞き手:別に可愛いのに。

   (バックSE:琴奈が枕で何度か聞き手を叩く音・優しく)※終了


①「か、かかか可愛い⁈⁈」


   (SE:琴奈がゆっくりと立ち上がり、後退る足音)


①「か……」


    聞き手:か?


①「かわいいとか言うな‼

  ワラワは頼れる大人な女性になりたいんじゃ‼」


   (SE:琴奈が走り去る足音)

   (SE:着物が乱れているため、途中で転ぶ音)

    聞き手の左側で転けるため、①から③。

    聞き手:……だ、大丈夫?


③「う、うぅ……大丈夫だから」


   (SE:琴奈がゆっくりと立ち上がる音)

    数秒間の沈黙後に聞き手がビックリしない程度の声量で琴奈が叫ぶ。


③「バカぁああああああああああああ‼」


   (SE:琴奈が走り去る足音・着物が乱れているため、普通に走る感じ)

   (SE:琴奈が障子を勢い良く開ける音)

   (SE:琴奈が数歩歩く足音)

    方向は同じだが、距離が遠くなるため、③から⑪。


⑪「べぇーだ」


   (SE:琴奈が障子を勢い良く閉める音)

   (SE:勢いがあり、障子に隙間ができるため、最後ちゃんと閉める音)

   (SE:障子の向こうで走り去る足音・着物が乱れているため、普通に走る)

    数秒の沈黙。

   (SE:鳥の囀りなど、朝の環境音)※フェードアウト



○鬼の国にある、巫女が住む和風な家・寝室前の通路奥(朝)

    琴奈が通路を走り抜ける。

    聞き手はいないが演出として声を届けたいため、壁になったテイで①。

   (SE:琴奈が駆け寄ってくる足音)※徐々に速度ダウン。


①「(呼吸を整える)はぁ……はぁ……」


   (SE:琴奈が壁に背中を預ける音)

   (バックSE:琴奈が背中を壁に預け、地べたに座り込む音)※開始


①「はぁ〜〜〜〜」


   (バックSE:琴奈が背中を壁に預け、地べたに座り込む音)※終了

   (バックSE:膝を両手で抱え込む感じの衣擦れ音)※開始


①「(小声)頼れる人がタイプって。

  ……大人の女性が好きって言ったくせに」


   (バックSE:膝を両手で抱え込む感じの衣擦れ音)※終了


①「(小声)信じられない。ほんと最悪。消えちゃえバーカ」


   (バSE:琴奈が目を袖で拭う衣擦れ音)


①「……うそ。お主のハート、絶対に打ち抜いてやる」


   (SE:琴奈が立ち上がる音)

   (SE:軽く着物を整える音)

   (SE:着物の帯をキュっと結ぶ音)


①「よし」


   (SE:琴奈が一歩踏み出す足音)


①「覚悟するのじゃ、人の子よ。次はこうはいかぬからなぁ!」


   (SE:琴奈が廊下を歩く足音・着物のため歩幅狭め)※フェードアウト



《続く》

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