第7話

蘭さんとの日々が始まって光は射した。

けど何か…こう…埋まらなくて。


生活も少し楽しくなった。

いい距離感を保ててた。


でもなんか、スッキリしなくて、

ある日、赤山さんに尋ねた。



――――――ある日の蘭さんのいない赤山さんのお店。


「…あれ?今日、蘭ちゃんお休みよ?」

「うん。今日はね、赤山さんに話しあってきた。仕込みとかしながらでいいよ。邪魔にはなりたくないから。」


「……そこ座って。」

「…ありがとうございます。」

「蘭ちゃんのこと?」

「はい。」

「…そうね、、あなたはどうしたいの?」

「…距離が欲しい。」

「なるほどねえ。近くなりすぎたのね。」

「はい…」


「………。」


赤山さんは僕の隣に座って爪の先で僕の顎を撫でた。


「んっ……」

「いいの?蘭ちゃん以外にそんな声出して?」

「ダメ…です…」

「言いつけてあげよっか?」

「やめて……くだ…あぁ!っ…」

「出すの?本当にいいの?」

「…出したくない。」


僕が涙目になっていると、赤山さんは僕を見て笑っていた。



「赤山さん…」

「蘭ちゃんに『男』がいても気にならない?」

「嫌です…。でも、僕は、、あの人と同じ目線に立ちたくない…。」

「ずっと足元に居たい?」

「はい…可愛がられてたい。。」


「私はにとって夫はそういう存在よ?『可愛い子』。あたしに従順な子。でもちゃんと私を大切にしてくれる。」


「…そういうのでもいいのかな?」

「私はあの子といて幸せ。」


「…蘭さんに会いたい。」

「行っておいで。」



――――――――――――『蘭さん!!』


肩で息を切らして、彼女のマンションを訪ねた。


「どうしたの。そんな慌てて。」


彼女はドアを開けて僕を見て驚いていた。


「俺…俺…蘭さんが大好きです。大好きなんだけど、、大好きなんだけど…。…偉そうにしたくなくて…その…」


「うん…どうしたいの?」


僕は勢い余って彼女にキスした。



「嫌です。蘭さんを他に取られるのなんて耐えられない!!」

「大丈夫。あなたは私のモノ。私はあなたのあるじ。黙って私の足下にいればいいの。」

「…知ってたんですか?」

「あなたはずっと私を求めてくれてた。その求め方がずっと変わらない。」

「誰にも渡したくないけど、えらそうにしたくない…でも大好きです…」


「…ありがとう。私も貴方を誰にも渡したくない。」


抑えきれず泣き出してしまった情けないを、彼女は強く…強く…抱きしめてくれた。


「ねぇ…大好だよ。蘭さん…本当に大好き…本当に…本当に…」

「私もよ?…そう。何も悩まくていいの。あなたは私の『可愛い子』…」


「蘭さん…ごめん…」


――――――――――――――――――。


「ねぇ。蘭さん」


事後、キッチンで水を飲んでた。


「ん?なぁに?」

「…蘭さん、変なこと聞いてきていい?」

「どんなこと?」

「蘭さんだから言えるんだけど…」

「うん。」


彼女は僕の言葉を待ってくれていた。


「あのさ、やっぱ俺、蘭さんに服着たまま、何もされたくないって思う。せめて俺が蘭さんの足元にいて、顔を撫でてもらうくらい。でも目だけは見てて欲しい。」


「それは私も好きよ?…そうね、それが理想の形でもある。」

「でも蘭さんが止められなくなったら…というか蘭さんの思うままにして欲しい。」

「それなら普段と変わらない。」

「なのに今日はごめん…。」

「なんで謝るの?むしろ嬉しかったな。」

「え?」

「私は嬉しかった。そこまで私を求めてくれて、、でもその中でも葛藤してて凄く…人間くさかった。でもそれがすごく良かった。」

「俺は蘭さんが大好きです…。けど、やっぱり同じ目線に立ちたくない。ずっと見下げてて欲しい。許可もらって初めて同じ目線に立って触れたい。…蘭さんならわかってくれますか?」

「受け止めてはあげられる。でも、それで苦しくなって壊れてしまうくらいならその前に今日みたいに来て。いい?」

「はい。。」



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目だけでいい 海星 @Kaisei123

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