第3話

――――――無人駅のベンチ。


「いいの?戻んなくて。」

「んー…」

「先が見えんのね?」

「そ。」

「まぁそうだよね。」


「……」

隣に座る人の顔を覗くと、


「何。なんか付いてる?」と。

「んー。キスしたい。」

「勝手にすりゃいいじゃん。」


そう言ってその人は僕を引き寄せてキスした。


「…あたしは変わらない。裏も表もない。あんたの前でそんなの通用しない。壁作られるだけ。」

「…やりたくなるわ。」

「そういうとこ、あたしは好き。」


また相手からキスされた。


「…お前、変わったな。」

「変わってないよ。学んだの。あんたは遠慮しち

ゃいけない。思いのままに行かないとまた逃げられちゃう。」

「……じゃあ逃がすなよ。」


僕は相手の頭を撫でて少し引き付けてキスした。


「髪色変えたんだな。似合ってる。」

「ありがとう。」


「……」

「どうしたの。」


彼女は僕が迷ってるのをわかってた。


「私はあなたの『最後の女』。行きたいなら行っていいよ?」


今迄はずっとそうしてきた。


でも今は……


僕はまた強引に引き寄せて抱き寄せた。



「その間に誰かに足開くのか?」

「…そうだとしたら?」

「……」


彼女を睨み付けると、


「大丈夫。ママはどこにも行かないよ。」

とおびえる様子もなく答えた。


僕は無言で彼女を抱きしめた…。


「あんたがあんたらしく居れるのはあたしでしょ?」

「…いいの?」

「いいよ。」


彼女の目を見つめたまま、彼女の口の中に指を入れた。


「…お前の全部が好き。」


そう呟いてその指を自らの口に入れた。

そしてまたその指越しに暫く彼女の口で遊んだ。



「…今も約束守ってんだ?従順だな。」

「えらいでしょ?褒めて?」

「なんだろ。その上からなのもまたそそられる。……美味しい。」

「そうやってあんたが喜ぶから今もそうしてるの。」


「……お前もいいんだよ?我慢しなくて。」

「でもそうしたらあなたは逃げるでしょ?」

「……弱さは裏では無いけど、でも強いままでいて欲しい。」

「でも弱い部分も好きではあるでしょ?」

「そそられるところではある」

「じゃあもう諦めて私で終えたら?まだ探す?」



「もういい。」

「うん。」

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