第27話「自然の中での楽しい一日」

 朝日が部屋に差し込むと、リリィは目を覚ましました。

 窓の外には、霧に包まれた山々の幻想的な風景が広がっています。


「わぁ、きれい……」


 リリィは寝癖も直さないまま、窓際に駆け寄りました。


「おはよう、リリィ。よく眠れた?」


 フローラが優しく声をかけます。


「うん! すっごくよく眠れたよ。今日は何をするの?」


「そうねぇ、朝食の後にハイキングに行こうかと思っているの」


 リリィの目が輝きます。


「やったー! ハイキング楽しみ!」


 朝食はホテルのレストランでバイキング形式。リリィは初めて見る料理に目を丸くしています。


「リリィ、これはフレンチトーストというのよ。食べてみる?」


「うん!」


 リリィが一口食べると、甘くてふわふわな食感に顔をほころばせました。


 朝食後、家族はハイキングの準備を整えます。リュックサックに水筒と軽食を詰め、歩きやすい靴を履きました。


「ムーンとサニーも一緒に行けるの?」


「もちろんだよ。二匹もきっと楽しめるはずさ」


 テラがリードを手に持ちながら答えます。


 ホテルを出発し、自然遊歩道に入ると、リリィは周囲の景色に目を奪われました。木々の間から差し込む光、さわさわと揺れる葉の音、小鳥のさえずり……全てが新鮮で魅力的です。


「あ! またリスさんがいる!」


 リリィが指さす先には、木の幹を駆け上がるリスの姿が。


「本当だね。山の中にはいろんな生き物がいるんだよ」


 テラが説明します。リリィは興味津々で周りを見渡します。


 道中、小川を渡る場面もありました。


「リリィ、石の上を慎重に渡るんだよ」


 フローラが手を差し伸べます。

 リリィは少し怖がりながらも、両親の助けを借りて無事に渡りきりました。


「やった! 渡れたよ!」


 達成感に満ちた笑顔がリリィの顔に広がります。


 昼頃、一行は小さな丘の頂上に到着しました。

 そこからは、遠くまで続く山々と、谷底に広がる湖が一望できます。


「わぁ……すごい景色!」


 リリィは息を呑むほどの美しさに見とれています。


 家族で持参したお弁当を広げ、丘の上でのピクニックを楽しみました。風に吹かれながらのランチは、格別の美味しさです。


# 第23話:渓流での清涼な思い出


 午後、陽射しが強くなってきた頃、家族は近くの渓流へと向かいました。森の中を歩くこと10分ほど、木々の間から清らかな水音が聞こえてきます。


「あ! 川が見えてきた!」


 リリィは興奮した様子で小道を駆け出しました。


「リリィ、転ばないように気をつけてね」


 フローラが優しく声をかけます。


 渓流に到着すると、澄んだ水が岩の間を縫うように流れる光景が広がっていました。木漏れ日が水面にきらきらと反射し、まるで宝石をちりばめたかのような美しさです。


「わぁ、きれい!」


 リリィは目を輝かせて、渓流を見つめています。


「さあ、水に入ってみようか」


 テラが提案します。リリィは少し躊躇しながらも、靴下を脱ぎ、ゆっくりと足を水に浸しました。


「きゃっ!」


 冷たい水に触れた瞬間、リリィは小さな悲鳴を上げました。


「冷たーい! でも気持ちいい!」


 最初は冷たさに驚いたものの、すぐにその清涼感を楽しみ始めます。リリィは少しずつ深みに足を進め、やがてひざ下まで水に浸かりました。


「パパ、ママ、見て! 魚がいるよ!」


 透明な水の中を、小さな魚たちが泳いでいきます。リリィはじっと動かないようにして、魚たちの動きを観察しています。


 一方、ムーンとサニーも水際で楽しそうに遊んでいます。ムーンは慎重に水に足を入れ、時折鼻先で水面をつついています。対照的に、サニーはより大胆で、浅瀬を駆け回っては水しぶきを上げています。


「ムーン、サニー、こっちおいで!」


 リリィが二匹を呼ぶと、ムーンとサニーは嬉しそうに駆け寄ってきました。サニーが勢いよく水に飛び込んだ拍子に、大きな水しぶきが上がります。


「きゃっ! サニー、やんちゃだね!」


 リリィは水しぶきを浴びて笑います。ムーンはより慎重に、リリィの隣まで泳いできました。


「よしよし、二人とも上手だね」


 リリィが二?の頭を優しく撫でます。


 フローラはビーチタオルを広げ、渓流の様子を見守っています。テラは少し上流に行き、天然の滑り台のような岩場を見つけました。


「リリィ、ここで滑ってみない? パパが受け止めるからね」


「うん! やってみる!」


 リリィは慎重に岩場に登り、テラの合図で滑り始めます。


「わぁー! 楽しい!」


 小さな滝のように水しぶきを上げながら滑るリリィの歓声が、渓流に響き渡ります。


 時間が経つにつれ、リリィは渓流の生き物たちにも興味を示し始めました。小さなカエルを見つけたり、水生昆虫を観察したりと、自然の不思議を体験していきます。


「ねえパパ、この葉っぱ、船みたいに浮いてるよ」


 リリィが拾った大きな葉を、みんなで小さな即席の船にして流してみました。葉っぱの船が流れていく様子を、家族全員で楽しく見守ります。


 夕方近くになり、水から上がる頃には、リリィの指はしわしわになっていました。


「見て、またおばあちゃんの指みたいになっちゃった!」


 リリィが自分の指を見せて笑います。


 ムーンとサニーも、すっかり水遊びを楽しんだ様子で、心地よい疲れを感じているようでした。


 帰り道、リリィは今日の冒険を興奮気味に話し続けます。


「今日はすっごく楽しかった! また来たいな」


「そうだね。でも次はもっと暖かい季節がいいかもしれないわね」


 テラが優しく答えます。


 ホテルに戻る頃には、リリィの頬はほんのりピンク色に染まり、目には満足感が満ちていました。渓流での清涼な思い出は、きっと長く心に残ることでしょう。



 夕食後、家族でバルコニーに出て星空を眺めました。街では見られないほど多くの星が、夜空いっぱいに輝いています。


「あ、流れ星だ!」


 リリィが指さす先に、一筋の光が走りました。


「何か願い事した?」


 フローラが尋ねます。


「うん! でも、内緒だよ」


 リリィは嬉しそうに笑いました。


 就寝時、ベッドに横たわったリリィは、今日一日を思い返していました。自然の中での冒険、家族との楽しい時間、そして美しい景色。全てが心に深く刻まれています。


(明日はどんな楽しいことがあるかな)


 そんな期待を胸に、リリィは幸せな気持ちで目を閉じました。窓の外では、静かな夜の森が、明日への冒険を待っているかのようでした。


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