第14話「種まきから始まる希望の物語」
春も終わりの頃の朝日が、グリーンヴェイル村の畑を優しく照らし始めた頃、リリィは両親と一緒に畑へと向かっていた。今日は特別な日だ。スイカとカボチャの種まきをする日なのだ。
「リリィ、今日はとても大切な日よ」
フローラが優しく微笑みかける。
「うん! 楽しみ!」
リリィの目は期待に輝いていた。
畑に着くと、テラが道具を準備し始めた。
「さて、まずはいつもの畝作りからだ」
テラの言葉に、リリィは小さな鍬を手に取った。
「パパ、畝の間隔はどれくらい空ければいいの?」
リリィの質問に、テラは驚いたような顔をした。
「そうだな、スイカは2メートルくらい、カボチャは1.5メートルくらいかな」
リリィは頷くと、慎重に畝を作り始めた。
両親は、そんなリリィの姿を見守りながら、微笑み合った。
畝作りが終わると、いよいよ種まきの時間だ。
フローラが種の入った小さな袋を取り出した。
「はい、リリィ。これがスイカの種よ」
リリィは大切そうに種を受け取ると、畝に小さな穴を開け始めた。
「一つ、二つ、三つ……」
リリィは丁寧に数を数えながら、種を植えていく。
「リリィ、上手ね。でも、スイカの種は3つくらいで十分よ」
フローラがアドバイスする。リリィは少し照れくさそうに頷いた。
次は、カボチャの番だ。
「カボチャの種って可愛いね」
リリィが不思議そうに種を見つめる。
「そうだね。でも、この可愛い種から、あの大きなカボチャが育つんだよ」
テラが優しく説明した。リリィは目を丸くした。
「すごい! 魔法みたい」
両親は、リリィの無邪気な反応に笑顔を浮かべた。
種まきが終わると、リリィはすでに畑に植えてあるニンジンの様子を見に行った。
「わぁ! パパ、ママ、見て! ニンジンの葉っぱ、大きくなってる!」
リリィは飛び跳ねるように喜んだ。
「本当だね。よく育ってるよ」
テラが頷く。フローラも嬉しそうに微笑んだ。
「リリィ、ニンジンの葉っぱを少し引っ張ってみる?」
フローラの提案に、リリィは慎重に葉っぱを引っ張った。
「あ! オレンジ色が見えた!」
地面から少し顔を出したニンジンを見て、リリィは歓声を上げた。
「うん、順調ね、よく育ってるわ」
フローラが優しく頷いた。
畑仕事を終えた後、リリィは両親と一緒に畑の端にある大きな樫の木の下で休憩をとることにした。テラが用意してきた水筒から、冷たい麦茶を飲む。
「ねえ、パパ、ママ。畑仕事って楽しいね」
リリィの言葉に、両親は嬉しそうに顔を見合わせた。
「そうだね。自然と一緒に何かを育てるのは、本当に素晴らしいことだよ」
テラが優しく言った。
リリィは、畑全体を見渡した。緑豊かな畝、色とりどりの野菜たち、そして遠くに見える森。全てが生命力に満ちていて、息をのむほど美しかった。
「自然ってすごいね。こんなにたくさんの命があるんだ」
リリィのつぶやきに、フローラが頷いた。
「そうよ。私たちは自然の恵みをいただいて生きているの。だから、感謝の気持ちを忘れちゃダメよ」
リリィは深く頷いた。
(前世では、こんな風に自然と向き合う機会はなかったな……この心地良い風、澄み切った空気……そして何よりこんな優しいパパとママがいて……幸せ……)
リリィは心の中でつぶやいた。
今のリリィには、この豊かな自然と、確かに、愛する家族がいる。
その事実だけで、りりィははちきれそうなほど幸せだった。
帰り道、リリィは両親に尋ねた。
「ねえ、スイカとカボチャって、いつ頃実がなるの?」
「そうねぇ、夏の終わりか秋の初めくらいかな」
フローラが答えた。
「楽しみだわ! 私、大きくなあれって、毎日お願いする!」
リリィの無邪気な言葉に、両親は優しく微笑んだ。
家に着くと、リリィは急いで自分の部屋に向かった。小さなノートを取り出すと、今日の出来事や感じたことを丁寧に書き始めた。
(今日植えた種から、きっと大きくておいしいスイカとカボチャが育つよ。楽しみだな)
リリィはそんな願いを込めて、日記を締めくくった。窓の外では、夕暮れの空が美しく染まり始めていた。小さな種たちが、これからどんな実を結ぶのか。リリィは、その成長を見守る日々を心から楽しみにしていた。
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