第68話 ライフ・パートナーは犬か人間か?
真奈美はジュリアンに告白していた。
「ママは多分2度と結婚しないと思う。これから犬を飼って、ワンコと一緒に住んでいればそれで幸せ!」
ところが、幸せは全く予期していない時にこそ現れてくるものなのだろうか?
ある映画の中で、
「自分が特別な人間であることを感じさせてくれる人は一人いれば十分である」という言葉を真奈美は聞いたことがあった。
真奈美は離婚後7年して、自分が特別な人間であるとまで言わないにしろ、何かしら大変ユニークなフィーリングを感じさせてくれる人、テイトに出会った。
ジュリアンには、
「ママが言っていたワンコです」と言って照れてテイトを紹介した。
ミシガンの上半島の田舎町で青春時代を送ったテイトと、大都会東京で育った真奈美。バックグラウンドがあまりにも違っているにも拘わらず、考え方がとても似ている。これは驚きだった。日本で俗に言う「馬が合う」とか、「空気のような存在」とは、国境を越えてもあり得るという新しい事実も嬉しい発見だった。
それまで結婚とは難しいものとばかり信じ切っていた真奈美だったが、自分の性格にぴったりの人との結婚の場合、難しいと言う言葉は当てはまらない。これは喜ばしい大発見だった。考え方の似た二人が力を合わせて築いていく結婚はなんと楽しいことか。
これこそ長年真奈美が求めていた真のライフ・パートナーだった。
難しい結婚を味わった後では、どんなに辛いことが周りで起きた場合でも、今の結婚は天国から送られたプレゼントのように変わらず存在していた。
真奈美が朝食の卵を焦がしても誰も怒っていない。よく忘れ物をしても怒っていない。取るに足らないことで腹を立てたりしない夫は、真奈美にとっては奇跡のようなものだった。
それら小さなことにいちいち感動する真奈美を見て、テイトは、
「よっぽどひどい扱いを受けていたんだね」と真奈美を抱きしめてくれる。
その様に、夫が普通でいてくれるだけで真奈美にとっては涙ぐむほどの信じ難い感激だったのだ。
そういうテイト自身も、一度地獄のような結婚を味わっていた。それだけに、真奈美の過去の苦労もよく理解してくれるのだった。
Tobe continued...
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