第66話 一番大切なこと

 真奈美の大好きな言葉は、なんといってもナイキのスローガンだった"Just do it!"


 真奈美は、新しく愛し始めていた男性にも別れを告げる決心をし、実行した。


 ジュリアンの父親への仕返しとして愛した男性と一緒になって幸せになれる筈がない。


 人との別れは辛い。しかし、ときには必要なことだ。


 良くない関係を引きずったままの弱い生き方を続けていては、心からの幸せや平和な気持ちを味わうことができない。


 今こそ誰のでもない、自分の人生を歩むときが来た!


 真奈美の生き方は多くの誤解を生みながら、ずいぶん遠回りをしてきたように思える。本当に不器用な生き方をしてきたものだ。


 しかし、真奈美は真奈美以外の人間にはなれない。これは正に真奈美独自の生き方だったのだ。


 彼女は思った。

「様々な問題に出会うのが人生だ。これから勇気を持って正しい選択をしていけば、時間こそかかっても、いつの日かきっとよい結果が得られる筈だ」


 デトロイトの夜景が好きな真奈美は、カナダとの国境に接したデトロイト川沿いにある高層ビルの天辺に一人で上がってみた。真奈美が人生の大半を過ごすことになったこのデトロイトという街も多くの誤解を背負っているのかもしれない。


「アメリカ中で最も評判の悪いデトロイトの街よ、なぜかおまえは今の私に似ているよ」


 夜の光は、何事もなかったかの様に静かにキラキラと輝き続けるばかりだった。


To be continued...

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