第51話 セクハラを軽くあしらうのが日本式

 日本の男性と話をしていると、アメリカでは必ずセクハラの対象になると思われる発言がポンポンと飛び出して来て、こちらの方がハラハラとするときがある。


 通訳が終わって一緒に昼食を取っている席で、

「真奈美さーん!」と声をかけられ、近寄ると、

「おっぱい本物か確かめただけ。エヘヘ・・・。」


 これなどは完全にセクハラだが、日本では軽く笑って済ませるのが常識であることを知っていた真奈美は、

「XXさん、いゃーね」とか言って笑って見過ごした。


 ストリップ劇場へ行くバスの中でも、

「ねぇ、ねぇ、真奈美さんの出番はいつ?僕たちのために踊ってよ」ここでも変に難くなってはいけない。


「えーっと、私の出番は火曜日。あ、きょうは水曜だから、また私の出番になる頃には、皆さんはもう飛行機の中だわ。ごめん!」と茶かすと、全員が笑ってそれでおしまいだった。だから、日本人男性は安全というのが真奈美の認識だった。


 ただ、かなりお酒の量が増えたときには例外もあるということを知ったのは、それからしばらくしてからのことだった。


 それは他の町まで泊りがけのツアーに付き添ったときだった。技術訪問も無事終了して、夕食後ホテルで数人のメンバーたちとお酒を飲んでリラックスしていたときだった。アルコールにアレルギー反応を示す真奈美はあまり飲むことができない。


 それで、

「じゃ、皆さん私はこれで。また明日の朝」と挨拶をすると、そのうちの一人が、

「真奈美さん、部屋まで送りますよ」と言ったので、それはご親切にと感謝して一緒に廊下を歩いていった。


 真奈美の部屋まで来てもう一度挨拶を済ませ、中に一人で入ろうとした瞬間、なんと酔って真っ赤な顔をしていたその客は真奈美を押して部屋に入り込み、ドアをロックした。


 あっという間もなくベッドに押し倒された真奈美はとっさに何を言うべきかを考えなければならなかった。


 日本文化の特性を思い出せ!日本人は評判を気にする国民である。だから、そこを突くべきだ!


「これ以上のことをしたら、グループの皆に言いますよ。でも、今ここですぐに止めてくれたら、誰にも何も言いません・・・」


 これはとても効果があった。その客は即座に部屋を出て行ってくれて、翌日はもう2度と真奈美の方を見ることすらしなかった。


To be continued...

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