第28話 日本に行こう!

 日本学学者になる勉強をしていたトロイが、突然日本へ行って日本の勉強をしたいと言い出した!

 

 日本の家族や友達に会える。日本のことを勉強すれば、トロイも少しは真奈美のことを理解してくれるだろう。こうして、日本行きの話は二人の間ですぐにまとまった。日本に向かう飛行機の中で、真奈美はとにかく日本へさえ行けばすべてが良くなると信じ込んでいた。


 一年半ぶりに戻った日本は真奈美を暖かく迎えてくれた。ある程度のお金が貯まるまでは真奈美の親の家に居候することになった。


 日本でお金が稼げるのは彼女だけだった。真奈美はアメリカに行く前に英語の家庭教師を何年かしていたから、そのときの生徒たちが、真奈美が帰国しているという噂を聞いて皆舞い戻って来てくれた。


今度はネイティブであるトロイと共同で英会話を教えることができる。真奈美が英語の基本を教えた後で、生徒たちはその場ですぐアメリカ人との英会話に挑戦して、うまく通じるかどうか試してみるという形を取った。その方法は意外に受けて、生徒の数はどんどん増えていった。

 

 しかし、東京での生活は結果的に真奈美をもっともっと苦しめることになった。


 第一に、真奈美の両親との同居は間違っていた。


 一つの屋根の下に、自分たちの意思ではなく、真奈美という媒介を通して一緒に寝起きすることになった文化も考え方も異なる年寄りと若者がうまくやっていけるかと言えば、答えは「ノー」であった。


例のごとくにまたバスローブでの朝食にクレームが上がった。それをきっかけに双方のイライラはエスカレートしていった。 

 

 一番疲れたのは、再び間に入っていた真奈美。毎日の様に通訳兼仲裁役をやっていたようなものだった。ストレスの溜まった真奈美は一人暮らしをしていた兄の文彦と相談をし、二人が日本にいる間だけは兄が両親のところに戻り、二人が兄のマンションで暮らすということに収まった。


 その頃の父の日記を読むと、教授としての任務、大学での問題に忙しかった父はほとんど家にいることがなく、文化の違いによるイライラの件はもっぱら真奈美の母とトロイの間だけに限られていたことが伺えた。すなわち、父は文化の違いによるトラブルの件などほとんど知らずに過ごしていたわけだった。


 父の日記には、

「真奈美たちが戻ってきてくれてとても楽しい」

「やはり、娘が近くにいるのは良い」とだけあり、ネガなことは何も書かれていなかったので、真奈美は少しほっとしたのだった。


To be continued...

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