第27話 お茶漬けやラーメンよりもっと嫌われたものは?
しかし、お茶漬けやラーメンよりももっと嫌われたものがあった。
それは何か?
タラコだった。これをオーブンで焼いた日は、冬だと言うのに家中の窓という窓、ドアというドアを全部開けられ、
「二度とこんな臭い物を焼かないように。」と念を押された。
また、買ってきた納豆は、ビニールの袋を二重にも三重にも縛ってからでないと冷蔵庫に入れることを許されなかった。
真奈美から見れば、アメリカ人の大好きなブルーチーズの臭いも相当なものだと思われるのだが・・・。
飛行機で隣り合わせたアメリカ人が「エクスキューズミー」と言った口からバターの臭いがプーンと漂ってきて、西洋人ぽい人を表現する「バタ臭い」という日本語の表現の語源を体感したこともあったぐらいだった。
やはり、
「これ、美味しいよ」と差し出した物に反応して、
「うん、本当だ。こりゃあ、美味しいや」と相槌を打ってくれる相棒はいい。
真奈美は同じ人間なのにどうしてこうも舌の感覚に違いがあるのだろうかと不思議に思った。
逆にトロイが、
「あー、美味しい。あー、美味しい」と言いながら6つも7つも平らげるベーグルというユダヤ人のパンは、半分に切ってクリームチーズでもつければまだ食べられるが、ベーグル自体の味は、日本の給食で一度も手をつけずに残していたパサパサのパンを思い出させる程度である。
トロイの大好きな五大湖のホワイトフィッシュも、海の魚と違って身がベチャベチャとしていて、海の幸で育った者にはとても食べられない代物である。
であるからして、彼にしても、一緒にベーグルに感激してくれない外国人妻は物足りなかったに違いない。
二人して、
「あー、同じ食べ物に感激してくれる人がいいなぁ」と、そこだけは同意して、共に呟きそうであった。
父の日記を覗く・・・。
「真奈が来日。ご飯のおかずに、久しぶりに彼女の好物だった焼いたタラコが出た。彼女が恋しがる筈だ。あれはアメリカにない味だろう。」
To be continued...
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