第20話 理解されない日本的遠慮
また、新婚生活に欲しいと願う品々を未来の花嫁が店に行って次々と選び抜き、いくらのこれがいくつ欲しいと書き込んだリストを基にプレゼントを贈る側の人々が、これまた一つ一つ自分の予算と睨み合わせながら選んでいくブライダルレジストリ。
いかにも合理主義のアメリカで人気を呼びそうなアイディアである。
今の時代の日本の若い娘たちにとってはなんということもないかもしれないが、まだまだ「謙遜」を美徳とする大和の国から来た女性に徹していた真奈美としては、再度戸惑ってしまった。
「あれも欲しい、これも欲しい」と書き込んでいくことは確かに楽しい作業ではあったが、どうしてもずうずうし過ぎるような気がしてならない。
「こんなに沢山書き込んで、誰も何もくれなかったら恥ずかしい」などというつまらない不安まで飛び出してくる始末。
そんなこんなでグズグズとしている真奈美を見て、一緒にいたミセス・トンプソンはきょとんとした顔で真奈美のためらいを不思議がる。別にプレゼントを強制するわけでもないし、すべては贈る側の自由だと言うのに、何をそんなにためらっているのか理解し難いと言いたそうな面持ちであった。
しかし、まだその頃の真奈美には、
「エイ、もうこの際アメリカ式に、これもいい、あれもいいでどんどん書き込んでしまえ!」と躊躇なく選びまくる度胸は備わっていなかった。アメリカンガールの大らかさが羨ましいと思う反面、
「日本人女性のこの遠慮深い繊細さが分からないのか?」と、日本人としてのプライドまで飛び出して、真奈美自身面食らったものだった。
To be continued...
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