第3話 やり直す
「じゃあ母さん、いってきます」
「いってらっしゃい!気をつけていくのよ!」
「うん、わかってるよ」
ㅤそうして俺は家を出る。
ㅤここから新しい人生が始まるんだとワクワクしながら歩いていると、急に後ろから背中を叩かれる。
「いてぇ!」
ㅤ何事だと後ろを振り返ると、そこには一人の男が笑いながら立っていた。
「よっす!おはよう司!」
「お前なぁ...出会い頭に背中ぶっ叩いてくる奴がいるかよ...」
ㅤこいつの名前は
ㅤいわゆる腐れ縁的なやつだ。
「まぁまぁまぁ!そんな怒んなよ!」
「別に怒ってねぇけどさ」
「とりあえず一緒に行こうぜ!」
ㅤ腐れ縁とは言ったがいきなり背中を叩かれようが許してしまえるぐらいには仲が良かった。
ㅤまぁそれも前の人生じゃ高校卒業以来連絡を取る事もなくなり疎遠になってしまったが...
ㅤ高校時代は親友と呼べるくらいには心を許せる存在だった。
「なぁなぁ」
「なんだよ?」
「昨日のあれ、考えてくれたか?」
ㅤ昨日のあれ?はて...なんのことだろうか?
ㅤ恐らく前の人生でもした会話なのだろうが、さすがにそんなことまで覚えてはいない。
「え、なんだっけ?」
「えぇ!?忘れてたのかよ!」
「いやちょっとな…」
「おいおい...頼むよマジで!」
「ごめんって、それで何のことなんだっけ?」
「ほら、前にも言っただろ?高校から一緒にサッカーやろうぜって話だよ」
ㅤ完全に思い出した。
ㅤそういえば明那は高校入学のタイミングからずっとサッカー一緒にやろうぜとしつこいくらいに誘ってきていた。いや......誘ってくれていた。
ㅤそれを昔の俺はほんの小さな挫折をした程度で蔑ろにしてしまっていた。
ㅤこの頃の俺はゲームばかりする人間になってしまっていたし、今思うと明那は俺を外の世界に連れ出そうとしてくれていたのだろう。
ㅤゲームばっかじゃダメだと、教えてくれていたんだ。
ㅤ前の人生ではほんとにすまなかった、だが今度の俺は違う!
「あぁ、いいぞ」
「だよなぁ...やっぱダメかぁ.........って...え?」
「い、今なんて?」
「だから、全国行こうって」
「いやいや!飛躍しすぎだろ!」
「は?行く気ないのかよ?」
「いや!行きたいけども!急にどうした!?前まで絶対やらん的なスタンスだっただろ?」
「なんだよ、やってほしくないのか?」
「いや!やろう!絶対にやろう!今更やっぱやらないとかなしだからな!」
「当たり前だろ?やりたいからやるんだよ」
「まじかー!やったー!ちょ!まじで楽しみなんだが!早く学校行くぞ!」
「おいおい、そんなに早くついても意味ないって」
ㅤ思わずクスッと笑みがこぼれる。
ㅤ何もやり直すのはサッカーだけじゃなくてもいいんだ。前は蔑ろにしてしまった人間関係も上手くやっていきたい。
ㅤさっかく貰えたチャンスなんだ!最大限このチャンス活かして2度目の人生を楽しもう!
ㅤそう決意して俺は明那の背中を追って走り出した。
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