恋する桐原には小さな秘密と悪癖がある。
緑雷ヶ丘7号
曙光、恋を知った。
初めてその姿を目に捉えたとき、カイヤナイトだ。の一言が一番に脳裏を駆けた。
数個と開いたピアスホール、首に気だるげに引っ提げたヘッドホン、ゆるり余らせた袖。少し不良な見た目で、朝早くから登校している彼女の背は、ただ参考書を広げ鉛筆を握るのみだった私にとって、一等眩しく、そして尊いものであった。
彼女へ惜しみ無く降りしきる曙光が、その艶やかな髪の合間からさらさらと玉のように散って机へ青い影を落としているのを見たとき、ああこの人はカイヤナイトから生まれたか、もしくはその生まれ変わりなのではないかと本気で思った。しとりと長い睫のその宿る元、夜空か、もしくは深海をを閉じ込めたような深い紺碧が煌めく両眼に貫かれたとき、私はその見立てに言い様のない確信を得たのだ。
彼女に捕らわれるのはもはや運命に定められたと一寸の疑いもない必然のことであった。
恋する桐原には小さな秘密と悪癖がある。 緑雷ヶ丘7号 @Mirai_gaoka
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