BONUS-TRACK:1 古の治癒魔法

☆☆☆ ATTENTION ☆☆☆


以降のエピソードは、後日談を描いたおまけエピソードです。

コンテストへの応募内容としましては、要項に則り、期間内に更新した前エピソードまでの部分を以て本編とさせていただきます。

よろしくお願いいたします。


☆☆☆  ☆☆☆ ☆☆☆  ☆☆☆






【シチュエーション:立ち寄った村で一休みをすることにした主人公とヒロイン。村の名物料理を堪能して宿に戻ったところで、ヒロインがあることに気付き……?】



【立ち位置は、ツインの部屋でそれぞれベッドに腰かけて話しているところからスタート/位置は前/距離はやや離れ気味】


(SE:木製の扉が開く音 ※縦板を鉄で固定したような扉)

(SE:荷物を置く音)

(SE:ベッドに座るぽふっとした音。衣擦れ)



「ご飯、美味しかったですね~。お腹いっぱいです」


「焼き鳥という名前なのにお肉がワイルドボアのものだったことにもびっくりしましたが、理由を聞いてみてまたびっくり!」


「魔王の影響で生態系が変化して、いつしかそちらが主に食べられるようになっただなんて……」


「世界の広さと、そこに住まう人々のたくましさを歴史と共に触れるのは、とても興味深く、新鮮です」


「そして改めて、勇者様が魔王を討伐なさったことの偉大さを」


「はじめ歓待しようと集まってくれた村の方々に、勇者様が直々に『普段通りでいてください』と申し出ていらっしゃったのも、カッコ良かったですよ♪」


(SE:主人公が謙遜で首を横に振る衣擦れ)


「……はい、わかっております。勇者様が、魔王を討伐したことで訪れるだろう変化の波を危惧なさっていること」


「もしかしたら、この村にも昔のように鳥が戻ってきて、焼き鳥がボア肉じゃなくなるのかもしれませんね」


「勇者様が世界をもう一度見てみたいと仰った理由が、今ならよくわかります」



(SE:ヒロインが立ち上がる衣擦れ)

(SE:ヒロインがこちらへ歩み寄る足音)

【ヒロインが主人公の手を掴む距離までやってくる/位置は前/距離近め】


「ですからそんなお顔をなさらないでください。あなた様の成し遂げたことは、間違ってなどいないのですから」


「……あっ。勇者様、腕にお怪我をなさっていますよ」


(SE:袖を捲る衣擦れの音)


「村に入る手前の森で、藪漕ぎをした際に引っかけたのですね」


「申し訳ありません、わたくしの歩みが遅々としているばかりに……」


(SE:主人公が首を横に振る衣擦れ)


「本当にお優しいのですね、勇者様は」


「しかしわたくしも、甘えるがままというわけにもいきません」


「ふふん♪ 実はですね、神殿を離れても勇者様の治癒ができるよう、内緒で勉強をしていたのですっ!」


「あ、どうやらその表情……さしもの勇者様でもご存知ないようですね~」


「かつては今のような仕官の自由度がなく、国から使いが来ては戦える人が徴兵されていたそうです」


「そうなると町や村には治癒魔法師が残らず、人々はモンスターと隣り合わせの危険な状況下で生き延びなければなりませんでした」


「そんな環境で編み出されたのが、魔力に頼らない治療法なんですよ」


「それでは、お手を拝借……れろー」


「ふふっ、びっくりさせてしまいましたか? こうして傷口を舌で慰撫すると、小さな傷ならば出血が止まり、治りが早くなるんだそうです」


「――あっ、見てください。さっきまで滲んでいた血が、止まっていますよね」


(ここだけ小声で)

「良かったぁ、失敗したらどうしようかと……」


「それじゃあこのまま、勇者様の体に溜まった疲れも取り除かせていただきますね」


「そうなんです。治癒魔法は外傷や毒などにしか効果が及びませんが、この古来の治療法では、疲れや頭痛といったものも和らげることができるそうなんですよ」


「それじゃあ、ごろーんとうつ伏せになってください。ごろーん♪」



【ヒロインが主人公の背中に跨る/位置は後ろ/距離近め】

「よい、しょっと」

(SE:衣擦れ)


「心の臓に近いところから揉み解していきます。その……初めてなので、痛かったらごめんなさい」


「んっ……しょ。ここを、こう……あれっ、ここはどっちでしたっけ?」


「背中の骨に沿って、体を開くように……んっ、はあっ……ん、んんん~!」


「どうでしょうか。わたくし、上手くできていますか? 痛くはありませんか?」


「えへへ、良かったです」


「勇者様はそのまま、ただ気持ちよくなってくださいね」


「はぁ、はぁ……慣れない体勢なので、ちょっと疲れますね……」


「ですが、なんだかわたくしの方も気持ちよくなってきました。勇者様に触れているところから、じんわりと熱くなって……」


「ふふっ、勇者様の目がとろーんとしてきましたね。かわいい♪」


「寝ちゃってもいいですよー。よいしょ、んっしょ……」

(だんだんと声が遠くなる)




【翌朝、ヒロインが部屋に入って来る音で主人公が目覚める/距離は前~斜め左前/距離はやや遠め】


(SE:ちゅんちゅんと鳥の鳴く音)

(SE:扉の開く音)


「あっ! お目覚めになられたんですね、勇者様。おはようございます♪」


「私は、ちょっとお散歩に。勇者様がぐっすりお休みでしたので、起こすのも気が引けて」


「もうすぐ朝食だそうですので、勇者様も準備をしてくださいね」


「そういえば……もう一つ、宿の方から『昨夜はお楽しみでしたね』と言われたのですけれど、酒場の方ならともかく、どうして宿の方が訊ねてきたのでしょう?」


「ひとまず『おかげさまで』と返したところニコニコとされていたので、返答は間違えていなかったと思うのですが……」


「こういう時って、どう返せばよいのでしょうか?」


「……って、あれっ? どうして頭を抱えているんですか? 勇者様っ?」

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