新たなる旅路へ〜あの景色を、君と〜

(SE:扉の開く音)

【主人公が教会を訪ねたというシチュエーション。ヒロインが奥から出てくる】


「はーい、ただ今向かいますー!」


「あっ、勇者様! あれからお身体の方は大丈夫ですか?」


「聞きましたよぉ。次期国王になるために、まず騎士団長として就任なされるそうじゃないですか!」


「聖女として、私も鼻が高いですね。えっへん!」


「……えっ、就任の話を見送った? えええええっ、どうしてですかっ!?」


「王として国を治めるには、まだまだ見識が足りないから、もう一度旅に出て改めて人々と触れ合う必要がある……?」


「なるほど。なんだか勇者様らしいですね」


「そんな勇者様が治める国ならば、きっと素敵な未来になるのでしょうね」



「あ、でもいいんですかぁ?」


「国の重臣たちが、『娘をぜひに!』と勇者様に押し掛けているんでしょう?」


「先日ちらっと現場をお見かけしましたけど……ほら、あの商工大臣のご令嬢! すごく綺麗な人でしたよね~」


「あ、わかりました! さては勇者様、その旅路を新婚旅行になさるつもりですね?」


「えっ? あっ……本当に新婚旅行にするおつもりだったのですね」


「あははは……言ってみただけだったのですが、当たってしまいました」


「あはは……」



(少し沈黙で間を空けてから、少し捲し立て気味に)

「では勇者様、どうかお元気で。良き旅になることを祈っておりま――ひゃあっ!?」


「ど、どどどどうしてわたくしの手を取るのですかっ!?」


「……ここに来た理由を聞かないのか、って?」


「それは……勇者様の出立を――わたくしにお別れを告げるためでしょう?」


「……えっ? 別れではなく、誘いに来た……?」


「新しい旅では、わたくしに隣を歩いて欲しい……ええっ!?」


「でも、それって……だって、この旅は未来の女王様との新婚旅行で……」


「わた、くしが……?」


「わたくしで、いいのですか……?」



(SE:主人公がヒロインを抱き締める衣擦れの音)

【目と目が合う立ち位置に。声は正面、至近距離】


「うっ、ぐすっ……嬉しいです。ひっく……」


「……憶えていてくださったんですね。ケワシー山の星空、一緒に見たいと言ったこと」


「ドンブラコからの海も、一緒に眺めたいです」


「マグマケイノの神殿にも、勇者様とって……」



「はい、喜んで。不束者ですが、よろしくお願いします」


「――あ、でももう無茶はダメですよ? リスポーンを担当する聖女が不在になるんですから」


「えっ? わたくしを全力で守るから、絶対に倒れることはない?」


「もうっ、すぐそうやって調子のいいことを言うんですから。えへへ」



「ええと、その……こういうの初めてで、改まると緊張しちゃいますね」


「勇者様」


「心から、お慕い申し上げております」(キス)






『甘々清楚な聖女様が献身的に癒してくれる極上リスポーン・タイム』

二人は幸せなキスをして終了エンド(完)

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