(6)トラップダンジョン in 火山

(SE:ワープの音)

【膝枕の想定で正面・やや近距離】


「――様……勇者様」


「良かったあ、お目覚めになられたんですね!」


「本当に、一時はどうなることかと思いました……」


「ええ。勇者様、転送されてきた時にはぺしゃんこだったんですよ。紙みたいにペラペラ~って」


「一体、今度は何があったのですか?」


「火山の神殿に……もうずいぶんと遠くまで冒険をされたのですね」


「はい、存じておりますよ。教会長から伝え聞いた知識でしかありませんが……」


「そうなんです。実は元々、マグマケイノの噴火を止めるために祈ったのが、わたくしたち聖女のはじまりなんです」


「神話では、女神ヒプノ様が邪龍ノイズを倒し、山で封印したとされています」


「そのため古来より、邪龍ノイズが苦しみにのた打ち回るせいで地震が起き、噴火をしていると云い伝えられていたんですよ」


「ふふっ、博識に見えました? えっへん♪」



「……でも、行ったことはないんです。もう何百年も前にモンスターの巣窟と化してしまいましたから」


「いつか、そこで祈ってみたいなあとは思っているんですけれど」


「えっ? 俺が魔王を倒すまで、もう少し待っていてくれ?」


「……そうですね。勇者様が魔王を討伐した暁には、きっと」


「ありがとうございます。勇者様ならきっと成し遂げられます」


(小声で)「そうなった時には、できれば勇者様と一緒に……」


「えっ、いえいえいえ! 何でもありませんっ、何でもありませんよ!?」


「あハイ、すみません。話が逸れてしまったのはわたくしのせいですよね、えへへ」


「勇者様は、どうしてその神殿に?」


「……龍払いの剣、ですか?」


(SE:チャキッという、掲げた剣が鞘の中で揺れる音)

「これが……なんと美しく厳かなつるぎでしょうか」


「なるほど、女神ヒプノ様の力を込めた聖剣なんですね。そんな遺物があの神殿に……」


「ですが、よくモンスターたちに奪われておりませんでしたね?」


「……へえ、当時の方々はモンスターの侵入を防ぐために、神殿じゅうにトラップを仕掛けていたんですか」


「…………ええと、その、わたくし察してしまったのですけれど」


「…………もしかして、先ほどの勇者様の御姿は、トラップで……?」


「です、よねえ……」



(SE:ヒロインががばっと頭を下げるので衣擦れの音)

【ヒロインが頭を下げるため、声が下向きになる】

「申し訳ありませんっ! 教会の歴史に連なる者として、代わりにお詫び申し上げますっ!」


「いえ、ですが……いくらモンスターから守るためとはいえ、勇者様を傷つけるようなトラップがあってはなりません!」


「えっ、話にはまだ続きがある? 道中のトラップには引っかかっていない? どういう、ことでしょう……」


「なんと。勇者の紋章を持つ者には、トラップが作動しないようになっていたのですね」


「……んっ? むむっ?」


「あの、つかぬことをお伺いしますが、もしや確認のために何度かスイッチを踏んだりは……?」


「ひん、やっぱりぃ! もうっ、もうっ、危ないことしないでくださいよぅ!」


「……ぐすん、わかりました。最後まで大人しく話を聞きしゅ――聞きます」


「か、噛んでませんもんっ! いいから続けてくださいっ、はい、どうぞ!?」



「へえ。奥の扉は、勇者の紋章がないと開かないようになっていたのですね」


「えっ、台座から剣を外したら入口が閉まって、両側から壁がせり出してきたのですか!?」


「あわあわあわ……やっぱり勇者様に危害を……っ!」


「大、丈夫? そんな時、ヒプノ様の声が聴こえてきた、と……?」


「『お前が真に勇者であれば、如何にすれば危機を脱することができるかわかるであろう』……?」


「んんん? どういうことですか? ど、どうしてわたくしを指差しているのですか?」


「えっ、せり出した壁が迫る中で、わたくしの顔が浮かんだ?」


「エスの下にリスポーンすれば大丈夫…………あっ」


「『ただいま』って、もう……っ。そんな危機一髪を乗り越えた後に、お気楽が過ぎますよ」


「えへへ、おかえりなさい!」

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