(5)いざ出航! vsクラーケン後
(SE:ワープの音)
(SE:波飛沫の音)
(SE:ばたばたと駆けてくる足音、続いて扉を叩き開ける音)
【大広間(約18畳)の中心に主人公、入口にヒロインという立ち位置。距離は遠めで、オンの声。SE:全体的に水の中で声を聞いているようなエフェクト】
「な、ななな何があったんですかっ!?」
「わっ、床がびしょびしょ……やだっ、勇者様が溺れてるう!?」
「今お救い致します! 【
(SE:じゅっ、と海水の蒸発する音)
【ヒロイン、こちらへ歩いてくる。距離が近づく】
「はあ~……びっくりしましたぁ」
「勇者様が転送される魔力を感知したので、おめかしを――こほん。正装への着付けを行っていたのですが、もの凄い音が聞こえまして……」
「大丈夫ですか? 意識はございますか?」
「ええと……呼吸よし、外傷よし。それから――」
「目の確認をいたしますね。この指は何本に見えますか? では、これは何本ですか? はい、正解です」
「では、この指の形は?」
「わかりませんか? うふふ、勇者様もまだまだですね~♪」
「これは今、城下町で流行しているサインだそうです。親指と人差し指を重ね合わせると、ほら。小さなハートに見えませんか?」
「こうして、想い人にこっそり気持ちを伝え――て」(言葉が尻すぼみになる)
「あわわわわっ、違うんです違うんです違わないけど違うんですっ!」
「今のことはっ! 忘れてっ! くださいっ!」
「えっ、水が入って何も聞こえなかったから大丈夫?」
「大丈夫じゃありませんよっ! 今、お耳の確認を!」
【ここから囁きパート。距離が近くなる】
(右耳に)「もしもーし、聞こえますかー?」
(左耳に)「こっちのお耳はどうでしょうかー?」
(右耳に)「ふぅー」
(左耳に)「こっちも、ふぅー」
(ちょっと体を起こして)
「どうです? 聴こえ方に不都合ありませんか?」
「えっ、まだ聞こえづらいですか?」
「どうしましょう……あ、そうだ。このハンカチで、こよりを作って――」
(SE:耳に布が入る音)
(右耳に)「こしょこしょこしょこしょ……」
(左耳に)「こしょこしょこしょこしょ……」
(体を起こして)
「いかがですか? 良かった、水が溜まっていただけのようですね」
「それでは。まだお身体は万全でありませんから、わたくしの膝をどうぞ♪」
【膝枕の想定で正面・やや近距離】
「それにしても。どうして海水と一緒に?」
「ふむふむ……クラーケンのせいで港町ドンブラコから船が出せず、人々が困っていたと。これは勇者様の出番、ですね!」
「それで、漁師の皆さんの力を借りて、クラーケンと戦い……」
「雷魔法を剣に纏わせて一刀両断!? すごい、そんな技が……!」
「魔法と剣技、どちらかだけでも大変なのに、両方を同時にコントロールするだなんて。さすが勇者様です!」
「……えっ、クラーケンを倒したのはいいけれど、その弾みで、足に捕らわれていた漁師さんが甲板の外に放り出されてしまったんですか!?」
「なるほど。その人を助けて甲板に投げ戻し、代わりに勇者様が海に落ちてしまったというわけですか」
(小声で)「……泳げない勇者様、かわいい」
「い、いえいえ! 何も言ってませんよ、何も! まだお耳に水が入ってるんじゃありませんか?」
「……あれ? 何か勇者様の服が膨らんで――きゃっ!?」
(SE:魚がびちびちと飛び跳ねる音)
「ふふふっ、どうやらお魚さんが、勇者様と一緒に転送されてしまったようですね」
「けれどどうしましょう。捨てるというわけにも、飼うというわけにもいきませんし。食べるにも、教会での殺生はできませんから……」
「ええ、食すこと自体は禁じられていません。命の恵みに感謝をする。それさえきちんと守れば大丈夫です」
「えっ? 少し外へ出てみないかって?」
「わあ、勇者様が捌いてくださるんですかっ!?」
「いえ、男飯だなんてとんでもありません! むしろ、勇者様が旅先で召し上がっているキャンプ飯というものに、ずっと興味がありまして……えへへ」
「それじゃあ、もう一息ついたら、お出かけにいたしましょうか?」
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