(3)次の村に辿り着いて

(SE:ワープの音)

【膝枕の想定で正面・やや近距離】


「――様……勇者様」


「うふふ、おはようございます。そうです、エスです」


(何かに気付いたように)

「……あっ」


「……申し訳ありません。勇者様はお辛い状況だというのに、こんな風にはしたなくはしゃいでしまうだなんて」


「えっ、どうしてはしゃいでいたのか、ですか?」


「それは、そのう…………勇者様にお会いできて、嬉しいからです……ごにょごにょ」


「本当は、お傍でお支えしたいのですけれど。わたくしの聖女としての力は、女神の御下みもとでなければ最大限に発揮することができず……」


「勇者様のご無事を祈りながら夜を数えるのは……少し、寂しいのです」



(SE:主人公が体を起こす衣擦れと、ヒロインの頭を撫でる髪の擦れる音)

「ふぇ……っ?」


「勇者様も、わたくしに会えないのが寂しいと、そう思ってくださるのですか……?」


「嬉しい、です……」


「あのう、勇者様? 突然動かなくなって、いかがしましたか?」


「えっ? ――やだっ、寝癖っ!?」



(SE:ヒロインがバタバタと動き回るので、衣擦れの音)

【主人公から顔を隠す様に身を捩るので、声が遠くなる】


「だって、だってえ……こんな朝早くにいらっしゃるとは思わなくてえ!」


「うう……一生の不覚です。もうお嫁にいけません」



【ヒロインが振り返って詰め寄るので、距離が近くなる】


「だ、だいたいっ! 勇者様はどうしてこんな時間にリスポーンをなさったのです!?」


「昨夜、新しい村に辿り着いて、宿に泊まって――ま、まさか! 昨夜はお楽しみでしたね的なことをしてお相手の女性から恨みを買ったんですね!? 私というものがありながらっ!!」


(SE:ポコンと軽いチョップで突っ込む音)

「あいたっ!?」


「……ごめんなさい、落ち着きます。すんすん」



「ええと、それで……就寝されていたら、明け方に怪しい物音が聞こえたと」


「実はそれが、夜な夜な町から金品をくすねる盗賊たちの仕業で」


「勇者様は外に飛び出し、剣を抜いて対峙されたと」


「い、1対50ですかっ!?」


「ご、ご無事だったんですか!? ――ああいえ、こうしてリスポーンしているということはご無事ではない……です、よね」


「村はっ、村の状況は……!?」


「盗賊のアジトにまで乗り込んで親玉を倒したから大丈夫? ……ほっ」


「さすが勇者様――と、申し上げたいところですが」


「どうしてそう、貴方は無茶をなさるのですか!」



「……えっ? リスポーンをすればわたくしがいるから?」


「そんな、信頼してるだなんて。勿体ないお言葉です……」



(SE:ヒロインが座り直す衣擦れの音)

「ええと、あの……そういうことでしたら、そのう」


「まだ治癒が済んでいませんし、完了するまで……わたくしの膝で良ければ、枕にいかがですか?」



(SE:主人公が膝の上に頭を載せる衣擦れ)

【正面から。膝枕であやす体勢になるため、距離が近くなる】


「お天道様が昇りきったら、お起こしいたしますから」


「それまでごゆっくり、お休みください」

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