(2)初ボス・キングスライム戦後

(SE:ワープの音)

【膝枕の想定で正面・やや近距離】


「――様……勇者様」


「良かったあ、お目覚めになられたんですね!」


「あっ、まだじっとしていてください。まだ治癒魔法が浸透しきっておりませんから」


「はい、エスです。そうです、ここは教会ですよ」


「勇者様のHPがゼロになってしまったことで、緊急転送魔法が発動したのです」


「先日、ゴッドブレスをおかけしましたでしょう? 実はあの時に。うふふ」


「えっ? 『おお、しんでしまうとはなさけない』……?」


「いえいえっ、そんなこと滅相もございません!!」


「勇敢に戦われた勇者様を称えこそすれ、情けないなどとは決して……!」


「……げえむ? 勇者様の元いた世界では、これが定型文だったのですか? なんと!」


「ええっ、旅立ちの際にはひのきの棒とおなべの蓋だけなんですかっ!?」


「しょ、所持金も300G!? そんな……なんと怖ろしいことでしょうか」


「なるほど。そのような環境で暮らされていたから、勇者様はお強いのですね」


「えっ、そういうわけじゃない? ……ううーん?」






「あ、いけない。治癒が疎かになってしまうところでした」


「はい、じっくり行きますよ♪」


「治癒魔法は一見、外傷をたちまちに塞いでしまうように思えますが――」


「既に流れ出てしまった血や、その時に受けてしまった痛みというのは残っているのです」


「実際に騎士団の方でも、後遺症で精神を病んでしまう方も少なくはなくて……」


「いけませんね、HP0から復活されたばかりの勇者様に、このような暗い話を」


「えっ、正直に伝えてくれて嬉しい……? そんな、勿体ないお言葉です。勇者様は本当にお優しいのですね」


「――って、違います違います! 今は勇者様が癒されなければならないんですっ!」


「ですのでどうぞ、私の膝の上で安静になさってくださいね」


「……あらっ?」



【服の方を覗き込むので距離が少し遠くなる】


「この辺り、衣服に穴が空いていますね……? 破れたのとは、ちょっと違う……?」


「なるほど、キングスライムと戦った時、飲み込まれて服が溶けた……溶けたぁ!?」


「大変です、すぐに鎧と服を脱ぎませんと!」



【『どうしてですか』の辺りから主人公の顔を覗き込む(詰め寄る)ように】


「駄目って……どうしてですかっ、一大事ですよっ、一大事!」


「勇者様のお身体は治癒魔法によって回復していますが、衣服は回復されないのです」


「もしもキングスライムの粘液が残っていたら、そこからまた毒や麻痺に蝕まれてしまうのですよ!」


「ご理解いただけたのなら、力を抜いてください。はい、ばんざーい」






(SE:鎧の繋ぎ目や服のボタンを外す音、衣擦れの音)

【ヒロインが服を脱がせる体勢に移行したため、また距離が遠くなる】


「よく見ると、どこもかしこもボロボロですね……おいたわしい」


「勇者様は、このような恐ろしいモンスターと戦っていらっしゃっるのですね」


「お身体が癒えた暁には、またキングスライムに挑まれるのですか……?」


「えっ、倒し、た?」


「キングスライムに攫われて飲み込まれてしまっていた子供を、村まで送り届けたところで、スリップダメージで力尽きた……?」


「さ、さすが勇者様!」


「――はっ!? そこまで粘液に侵されているのならば、モタモタしていられません!」


(ここで主人公がヒロインの手を止めるので、衣擦れのSEが止まる)

「もうっ、どうしてお止めになるのですかっ!」


「……えっ? ズボンを脱がされるのは恥ずかしい……ああっ!?」


「申し訳ございませんっ、申し訳ございませんっ、申し訳ございませんっ!!」


「わ、わたくしったら、はしたない……」



【ヒロインが後ろを向く】


「あの、その、わたくし後ろを向いておりますので……ど、どうぞ」


【ヒロインが勢いよく振り返る】


「あっ、着替えの用意を忘――れ、て……!?」


「きゅう~~///」

(SE:ドサッと人が倒れる音)

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