紙と電子の現状及びラノベ市場についての雑感

 僕がデビューした2018年末当時、ざっくり紙9:電子1でした(もっと、電子は少なかったかも……)。

 それから六年弱が断ち、市場はかなり変化しました。

 電子は着実に市場を広げていましたが、コロナ下で一気に伸長し、現在は紙7~8:電子2~3弱、が何となく肌感覚となります。要は六年で電子が倍に増えたわけですね。なお、これは私見であり、客観的なデータに基づくものではないことに留意してください。実際はもっと電子が伸長しているのかもしれないし、もう少し規模が小さいかもしれません。まぁ、コミックの方は、もう完全に電子が紙を上回ったようなので、ラノベも何れはそうなっていくのでしょう。

 ……どちらせよ、紙がある程度売れないと死なのですが。


 ここからは上に紐づいて、ラノベ市場の全体規模について。

 皆様もよく聞かれていると思うんですよ。


『ラノベ市場はピークを過ぎ、衰退している』


 デビューする前は僕もそう思っていました。

 ただですねぇ……何となくなのですが、これ、結構怪しいと思っています。何なら、全体のパイは伸びているんじゃ? という感覚もあり。

 世間一般で語られる『ラノベ衰退論』は、2000年代前半と今の市場規模を比較してのものだと理解しています。

 ですが、そこには現状のラノベ市場を牽引しているであろう、二つの視点が不確かなまま放置されているように思うのです。


1.電子市場の正確な把握が為されていない

 実の所、ラノベの電子売上がどの程度なのかを正確に知っているのは出版社様だけであり、他は全て推論です。

 紙書籍市場が縮小しているのは正しくその通りであり、そこだけを切り取れば2000年代前半よりもラノベも同様なのでしょう。


 けれど、紙+電子=総売上、と比べた時、果たしてどうなのか?


 仮に、世に出ている『ラノベ衰退論』が全て正しいならば、ラノベレーベルの新規参入が絶えないのは些か奇異に思えます。商売である以上、何かしらの勝算があってのことなんじゃないでしょうか。


2.海外市場売上の視点が欠落している

 K社の決算説明を読むと分かるのですが、ラノベの売り先は日本市場だけに留まっていません。むしろ、力が入れられているのは海外(特に北米。今後は欧州)です。 それに伴い、海外売上は確実に伸びていて、僕自身の売上もこの二年余りで拡大しています。

 この流れは、K社が北米の電子書店を積極的にM&Aしていることからも、当面続くものだと認識しています(※アニメも北米で人気があれば、二期作成に影響するらしいです)。


 要は……ラノベ作家=殆どの人間はご飯が食べられない、というわけではなく、少なくとも2024年時点では、書き続ける気力と行動力+幸運があれば、それなりに食べられる職業ではある、ということです。

 当然、大ヒット作家様以外は常に丁半博打なので安定していません。発売前は「売れなかったら……」という何とも言い難い不安に苛まれます(※作品は『面白いから売れる』というわけではなく、どんな作品も最後は運の要素が絡みます。作者と編集様は常に、売れる! と思って作品を完成させています)。

 それでも、イラストレーター様に自分のキャラを描いてもらえることと、書店に自分の作品が並ぶのは、何度経験しても感動しますし、得難い経験であるとは思います。普通に生きていて、中々ないですしね。

 この道をお勧めはしませんが、絶望しかないわけでもないよ、ということで一つ。


 次話は、この六年間で得た多少の知見について。

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