②
デヱト当日の朝。白彩は、煌龍が用意した着物をトキに着させられている。
「白彩様。とっても可愛らしいですよ」
「はぁ……」
姿見に映るのは、薄紅藤の着物に紺色の行灯袴姿の白彩。髪も束髪くずしに結われ、女学生風に装いだった。
―可愛らしいと言われても。小学校にも行ったことの無いわたくしに、女学生のような格好が似合うとは思えない……―
トキに褒められようとも、白彩は自分には不適切な格好に思えてならない。
しかし、「支度はできたな。けっこう、似合っている」。煌龍に言われると、湯気が出るほど顔を赤くする。
煌龍も、頬を赤る白彩に胸を掴まれる感覚を覚える。
そんな二人を微笑ましい目で見ながら、「早くしないと、日が暮れてしまいますよ」と出かけるようトキは迫り立てる。
トキに急がされるがまま、白彩と煌龍は屋敷を出た。
―漸く、二人で御出かけなされる。どうか、二人が上手くいきますように。―
白彩と煌龍の背中を見送りながら、トキは今日という日が二人にとって良いものであるように願った。
「歩くのに支障は無いか?」
街に入って直ぐに煌龍に尋ねられる。
「はい。問題無く歩けますので、もう少し急いでも大丈夫です」
質問の意図が足が遅くて迷惑だと勘違いした白彩は、急ぎ足が可能だと表明する。
「そうか。ならいいんだ」
しかし、違ったようで、ゆったりとした足並みで歩く煌龍。肩透かしを食らったような白彩は、僅かな間足を止めて唖然と煌龍を眺める。すると、彼が踵を返し「やっぱり、足が痛いのか?まだ、街に入って間も無いが、何処かで休んでいくか?」と気を配る。
「いいえ。立ち止まったのはそのような理由からではなく……その……て、天気が良いなぁと思い……」
自身がぼんやりと歩みを止めたが為に、煌龍の足を止めさせた。慌てて白彩は取り繕うが、誰がどう見ても偽りとしか思えない言い訳。
しかし、「確かに、良い天気だな。空も澄んでいる」などと煌龍は本気で白彩が空景色に足を取られたと思っていた。
自身が言った嘘を信じ、白彩はほっとすると同時に騙したことに対する罪悪感に苛まれる。意識が散漫になり、再び歩いていたら足元が疎かになった。小石に躓き、転倒しかける。履き慣れていないブーツであった為、踏ん張りが効かずそのまま地面に転がる筈が、煌龍に支えられ難を逃れた。
「大丈夫か?」
「はい。何とか……」
「そうか。でも、また転ぶのでは無いかと不安だ。しばらく手を繋いでいろ。絶対に離すな」
煌龍に手をしっかり握られた白彩は、心臓が早鐘を打ち目の前がチカチカする。
「クスクスクス……」
心が落ち着かない彼女を現実に引き戻したのは、意地の悪い笑い声だった。見るからに女学生だ。
「やだ。あの子、色無しじゃない」
「私、はじめて見た」
「何の力も持って無いから、他人頼りなのね」
「あの人、婚約者か、何か?綺麗な人なのに、色無しが相手で勿体無い」
心無い言葉。他人にどうこう言われる筋合いなど無い。しかし、白彩はその陰口を当然だと受け止める。
―そうよ。わたくしのような色無しが、煌龍様の隣に立つなど可笑しい……—
―ましてや、手を繋いで歩くなんて……—
街に入ってからヒシヒシと感じていた侮蔑の視線。思っていたよりも少なかったし、支乃森の屋敷に比べたらそこまで酷くは無い。しかし、自分はやはり蔑まれべき存在なんだと、白彩は思い知らされる。
繋いだ手が居たたまれず、弱々しく離そうとした。しかし、煌龍は離れかけた手を繋ぎ直す。
「煌龍様……」
―俺に任せろ。—
口では言わないが、おまえは何も案ずるなと言わんばかりの視線を白彩に注ぐ。
煌龍は白彩の手を握ったまま、女学生たちの方に顔を向ける。顔の角度的に、白彩は煌龍がどういった顔をしているのか見えなかった。しかし、女学生たちは煌龍の顔を見た途端ヒェっと声を上げ、真っ青な顔をして逃げ出す。何故なら、今の彼の顔は成人男性でも視線一つで戦慄させる冷たい顔をしていた。
正しく、『冷酷な炎』。白彩に手を出した人間は、冷たい炎に呑まれる未来しか無い。
当の白彩は訳がわからず首を傾げる。だが、視線をこちらに戻した煌龍の赤い瞳を見ただけで安心した。先程の冷酷な視線とは比べ物にならない、暖かみをその眼から感じた。
しかし、色無しであることの引け目から、気兼ね無く街を歩くことができなかった。
それは煌龍もわかっている。だから、最初に行く場所は既に決めていた。
今更ながら、白彩は本日どこへ行くのか気になりだした。今日に至るまでは、はじめて彩都の街中を歩くという緊張から、行き先まで気が回らなかった。
煌龍が足を止め、手を繋いでいた白彩も当然のように止まる。目の前には洋館の風のお店が建っており、扉を開くとカランカランと鈴の音が響く。
「いらっしゃいませ」
店主である女性は白彩の白き眼を見たにも関わらず、邪険な対応はしなかった。寧ろ、丁寧に向かい入れてくれる。
―彩都には、親切な人が多いのでしょうか?―
道中、街行く人々全員が色無しの白彩を奇異の目で見る訳では無かった。勿論、先程の女学生のような方も居たが、白彩が思っていたよりあからさまな態度に示す人は少なかった。
店内を見てみると、アンティークのアクセサリーやボンボニエールなどの小物が置かれた雑貨店だった。
本などで西洋文化をいくばくか齧ったが、はじめて見る西洋の品々は乙女心をくすぐる。特に目に留まったのは、純白の布に上品なレース模様の日傘。花々のように編み込まれた糸に惹かれた白彩は、それに釘付けられてしまう。
「それが欲しいのか?」
日傘を凝視していると、物欲し気にしていると捉えられたのだろう。あながち間違いでも無いが、西洋文化が浸透して間も無く、大抵の品々が高い。この日傘も恐らく高級品だ。
連火家に来てから、部屋だけでなく、着物までいただいている。この上、更に物を強請るなどあってはならない。
「全く欲しくなど、ありません。ただ……こんなに薄い生地で雨風が凌げるのかなっと気になっただけです」
「それは日傘だ。雨ではなく、日の光を遮る傘だ」
それは本で知っているが、白彩は西洋文化に疎いのだろうと煌龍はわかりやすい説明をする。
「元々、今日はこれを買う為にここに来た。おまえが気に入ったのなら、これにしよう」
そう言って煌龍は、白彩が一目惚れした日傘を購入する。
会計の際、白彩は値段を見て目眩をしかけるものの耐えた。出かけて間も無いのに、ここで倒れまいと意識を保つ。
「ほら、使え」
店外に出て、煌龍は直ぐに買ったばかりの日傘を白彩に渡す。
「ありがとうございます」
白彩は素直に受けるが、内心使うことに躊躇いを持っていた。
―高価な日傘を壊してしまったらどうしよう……―
しかし、御厚意でいただいた物を使わないのは失礼だ。傘を開き掲げると、レースの布越しに太陽の光が入る。
―花のようなレース模様の暖かい白の光が心地良い。―
―使うのにビクビクしていた感情など忘れてしまえる。―
「これなら、眼を隠しやすい。堂々と街を歩くことができるだろう」
煌龍の言葉から、白彩が何も気にせず街を闊歩できるよう日傘を与えたことがわかる。
「わたくしが眼の色を気にしていたから、煌龍様をこれを……」
白彩は感激のあまり言葉が出ない。
「そういう物が一つでもあった方が良いと聞いてな」
聞いた相手は勿論、愛我だった。色無しであることに引け目がある白彩の為に、眼元を隠せる物を与えたらと勧められた。
「日傘なら和装でも似合うと思ってな。それに、慣れないブーツでも、杖代わりになる物があったら安心だろ」
そういった意図もあったようだが、杖代わりに使ったら日傘の先端部分に傷が付く為、白彩は絶対できない。
―何十年と保つ物ではないけれど、できることならずっと大切にしていたい。―
そんな想いを胸に、白彩は傘を挿しながら煌龍の隣を歩いた。
御昼頃、二人は今流行りのカフェーで昼食を取っていた。
―連火家でも洋食は口にしていたけれど、外で食べると雰囲気が違う。—
最初、食べ慣れない洋食に白彩は戸惑っていたが、段々と心行くまで味わえるようになった。はじめての外出なことも相まって、カフェーでの食事は一段と美味しく感じた。
「美味いか?」
「は、はい。とても、美味しいです」
「そうか」
唐突に、美味しいのか尋ねられ、白彩は吃ってしまう。しかし、煌龍は特に指摘せず、珈琲を飲む。
―わたくしが言葉をつっかえたとき、叔父様なら非難していた。—
―『翡翠ならもっと流暢に喋る』と言って。—
言葉一つ取っても、支乃森家では
「お待たせいたしました。こちらデザートのアイスクリンです」
ウェイトレスの女性が、西洋の氷菓子を運んで来た。料理のときもそうだったが、色無しの白彩に嫌な顔一つしない。
「彩都の人は優しい人ばかりですね」
ウェイトレスが厨房に戻ると、そんなことを零す白彩。自分がこんなに人から拒絶を受けないことに戸惑いを感じている。
「わたくしは色無しなのに……」
勿論、出会う人全員が寛大な訳ではない。一定数、街で白彩を貶した女学生たちのような人は居る。
だが、現在の色國に於いて、色無しを差別する概念は古くなりつつあるものだった。
「色無しだからと、人を侮蔑する方が可笑しいんだ。それに、今の色國は海外との貿易が進んでいる。西洋人は色彩眼を持っていないから、自然と色無しと呼ばれる人々も増えている」
色彩眼を持つのは色國の人間だけだ。しかし、外国の幾つかの国は、色彩眼に類う特殊な力を持っていたりする。
例えば、欧州では地獄の悪魔と契約し、髪に魔力と言う力を宿している。魔力は魔術という力を使う源となるそうだ。しかし、色國の色彩眼とは違い、十年以上の修行を得なければ容易に扱えない代物らしい。
「そうなのですか……」
「あぁ。欧州人の血を引く色國人は、色彩眼か魔力を宿した髪・
だから、色無しを下げずむ概念は古き悪習でしか無い。しかし、その悪習の概念は深く、彩都に住む一部の人間しか理解していない。
だが、わざわざ白彩に言うことではないと、煌龍はそれ以上のことは言わなかった。
「時代は様変わりしているんですね」
「あぁ。ところで、アイスクリン溶けてしまうぞ。早く食べたらどうだ」
「は、はい。い、いただきます」
白彩はアイスクリンを匙で一掬いする。
―本で見たことがあるけれど、西洋の氷菓子なのよね。凍っているのに、匙で掬った感じはとても柔らかい。—
凍っているとは思えないアイスクリンに怪訝な表情を見せながら、匙を口に運んだ。
「……ッ⁉」
舌ですっと消えるアイスクリンはとろけるように甘く、頬までとろけてしまいそう。白彩は自身の頬に手を添え、アイスクリンを堪能する。
―気に入ってくれて良かった……―
そんな彼女を前に、煌龍は心の底から喜んでいる。昔した約束の一つ、色々な場所に連れて行きたくて……。外の世界を知らない白彩に色々な物を見せたくて、体感して欲しくて……
普段、西洋風の物を与えているのも、母親を意識してだが、今どきの女性が好んで西洋の真似事をしているというのも大きい。幽閉されていた白彩は、同年代の女の子がしていることができなかったから、今からでも体験できることはさせてあげたいというのが彼の心情だった。
本日の白彩の服装が女学生を意識した物だった。足元がブーツなのも、いずれ連火家の当主の妻として他所の家との交流の際に洋装を求められる可能性が有る。それの予行演習みたいなものだった。
煌龍は、それからも白彩に彩都の街を案内する。
店通りを歩いていると、白彩は『
「あれは?空水晶?はじめて見ました」
『空水晶』とは、色彩眼の力を閉じ込めることができる透明な水晶。
色彩眼の神通力は二歳~五歳頃に発現するが、幼児が使用するには危うい力。だから、力を抑える為に用いられる。水晶を色彩眼と照準を合わせ、一分待つと色彩眼の力が水晶に移り一ヵ月神通力が使用できなくなる。
力を吸った空水晶は吸った力に合わせて、色が付き透明から半透明になる。例えば、赤色の色彩眼なら、赤い水晶に。緑色なら、緑の水晶に。
色彩眼は、同じ色、同じ家系であっても、個々によって色に微妙な違いが有る。だから、力を吸った空水晶も微妙な色の違いが生まれる。加工することができる為、調度品としても人気であった。
色付いた空水晶には吸った力を少し宿しており、御守りとして使われたりもする。
「少し、見てみるか?」
「いえ。はじめて見まして、気になっただけです」
「そうか……。店に入っても良いが、この後行く所は既に決めているからな。時間から鑑みて、あまりゆっくり見る時間が無い」
煌龍は申し訳ない顔をするが、「遠目から見れただけでも、充分です。気にしないでください」と白彩がやんわり断る。
「すまない。また、今度な」
煌龍は謝りながら、白彩の頭を撫でる。最近、上手く会話ができていなかったから、余計に煌龍の距離の取り方にやきもきする白彩だった。
本日、最期に訪れたのは呉服店。店構えも大きく、一目で老舗高級店なのがわかる。看板には『
「長らく連火家が贔屓にしている店だ。おまえが今日着ている物も、ここで揃えた」
白彩は着ている着物に手を当てた。触ってみると、改めて上等なことがわかる。
―恐らく、普段着ている物もここで買われた品だわ!—
―こんなに立派な御店の着物をわたくしなんかが着て、店の品格が失われないのかしら……—
自分が韶光屋の品を着ることで、着物が見劣るするのではないかと白彩は気に病む。
しかし……
「連火様、いらっしゃいませ。そちらが話しにあった御嬢さんですね。とても可愛らしい」
店主である女性に気に入られた。
「今日はこいつに幾つか着物を選んでくれ」
「かしこまりました」
―えっ⁉本日は煌龍様の御召し物を買うのだと思っていたけれど、最初からわたくしの着物を買うつもりでここに……—
既に充分な数の衣類を与えられている。今日は日傘も買っていただいた。これ以上の施しはいいと白彩は発言したかったが……
「ささ。奥の間へ」
店主に店の奥に連れられ、発言する好きなど与えてくれなかった。
「夏に向けて、涼しげな柄など如何でしょう」
「そうだな……、あと今日買った日傘とも合わせたい」
「でしたら、空色のこちらなどおすすめです」
「睡蓮か、悪くない。無地の物も幾つか出してくれるか」
「はい。ただいま」
話しが勝手に進んでいく。既に十五反もの反物が並べられ、これで着物を作るようだ。
白彩はこれ以上着物をいただくのは過分であると断りたかった。でも、断れる空気にあらず、じっと次に来る反物を待つしかなかった。
「これも良いな。おまえはこの二色なら、どちらが良いんだ?」
肌に合わせるだけでなく、柄や色の好みを聞かれる。
「えっと……」
しかし、長らく
突き出されたのは緑と赤の着物。以前なら、草一郎に合わせて緑を選ぶが、今は連火家を連想する赤を選ぶのが正しい。でも、煌龍は白彩が望む物を聞いている。
どちらも選べず困り果てていると、衣桁に飾られた一枚の着物が白彩の心に刺さる。
―儚い白と……美しい赤……—
上の方は白く、下に行くに連れて淡い赤が浮かび上がり裾まで行くと鮮烈な赤へと変化している。無の白と存在感の有る赤。全く関連の無い色が混在しているのに、互いを高め描かれた花や蝶の模様がより美しく輝いている。
―白い着物に寄り添う赤は、色無しの私をいつも見守ってくれているよう……—
そして、鮮烈な赤は、夢でよく見る赤や煌龍の瞳の赤と似ており、白彩を安心させる。
「……すまないが、これで一着仕立ててくれ。この反物に合う帯や下襟も帯揚げなども」
「はい。合いそうな物を幾つか出しますね」
日傘のときのような状況になりかけている。
―また物を強請ってしまった!流石に、もう遠慮しなれけば……—
「あの……」
だが、白彩の口は煌龍の眼を見て止まる。
―どこか……嬉しそう……—
普通では気付かない程、綻んだ目元。でも、そこには白彩が先程感じたものと似た感情があるように思える。
結局、着物だけでなく、一緒に使う帯なども大量に注文された。仕立てたあがった着物が届くのは一ヶ月後らしい。
煌龍から色々な物を貰ってばかりで、素直に喜べない白彩。自分は顔料として何もできていないこともあって、表情を曇らせる。
本来なら真っ直ぐ屋敷に帰宅する予定だが、唐突に煌龍が進路を変えた。
「急で悪いが、あと一件だけ付き合ってくれ」
また何処かで買い物をして、贈り物をさせるのではと予期する。白彩は今度こそ御断りする決意を胸に連れ添うが、連れて来られたのは大きな塔。見上げたそれは十階以上は有りそうだ。
―確かこの建物は……『
―中には昇降機という、自動で登ったり降りたりできる乗り物があるそうですが……本当なのでしょうか……—
本で読んだが、見た訳では無いのでいまいち信じられないでいる白彩。だが、中に入って一階のエントランスからそのまま昇降機に乗ると、自動で上層部に上がる感覚を体感する。
―こ、これが、昇降機!耳鳴りが激しいけれど、本当に上に登っている……—
昇降機の窓から見える様変わりする光景に唖然としていると、あっという間に最上階の十二階に到着した。
最上階は下の階に反して木造だった。和洋が混在した面白い建物だが、白彩は建物よりも目の前の景色に釘付けとなる。
日は完全に沈み、空は夜陰。月も星も一切見えない。
街も夜籠りして、遠目からは黒一色しか無い筈なのに、雲で消えた星空の代わりに街が輝き眩かった。
―ここに来るまでぽつぽつ電灯が付き始めていたけれど、上から見るとこんなに明るいの……—
―まるき、流れ星が町にたくさん落ちてきたよう……
白彩にとって夜は怖い物だった。人が来なければ、何よりも孤独を感じる常闇。草一郎が来れば、彼に怯える恐ろしいひととき。
けれど、彼女は今。外の世界には、眩い夜が有るのだと知った。
「夜景、綺麗だろ」
隣に立つ煌龍も眼前の景色を眺め、「浮かない顔だったから、これでも見せて元気になればと思ってな」と呟く。
再び目の前の街並みを焼き付けると、白彩の世界が色付く。
―外の世界にちゃんと目を向ければ……世界はこんなにも美しかったんだわ……
見ているようで見ていなかった世界の色。様々な色が交差して、以前までとは違って見える白彩の世界。
その色の中には、わかりづらいけれそ確かに存在するほんのり赤い煌龍の優しさもあった。
「煌龍様。本日はありがとうございました。わたくし、世界がこんなに美しいんだなんて考えてもみませんでした」
白彩の感謝の言葉に、優しい赤は少し色が濃くなる。
頬を染めた煌龍は「昼間の景色もなかなかだ。また機会が有れば連れて行く」と頬をかく。
―結局、もらってしまった。煌龍様の優しさと、世界に交差する色の存在を……—
けれど、今度は素直に受け取れた。もらったものを胸に、白彩の世界はこれから色付いていくのだろう。
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