第22話 運命の日を目前に
――――晩餐会から数週間後。
相変わらず私は離宮から出させてもらえないが、それでも外から食材や素材を仕入れ、手料理をフィーにご馳走している。たまには装備を作ったりフィーのお仕事を手伝ったりと離宮のみんなと楽しく過ごしていた。
そんな折、侍女のお姉さま方が持ってきてくれたパーティー用衣装を見て、ついにこの日がきたかと早速フィーの元へ衣装を運び入れてもらった。
「遂に、俺たちの婚姻が発表されるのだな」
「うん。フィー」
私たちに先んじて、まずはマティアス兄さまとクレア姉さまの婚姻が発表された。
そしてそのお披露目パーティーと一緒に私たちの婚姻も発表されることになっている。
王太子殿下とクレアさまのお披露目のパーティーにて発表してもらえるだなんて、光栄すぎるわ。
「……キアは、本当に悔いはないか?俺と一緒に、臣下に下ることについて」
「もちろんよ。あなたとなら、どこまでも一緒に行きたいもの」
婚姻が発表された後はフィーは爵位を賜って、臣下に下ることになっている。
フィーは魔力は豊富なのだが、いかんせん病弱だ。だからこそ少しでもフィーの負担を減らすため、これを機に静かな自然豊かな土地でゆっくりと静養しながら、仲良く領地経営をする予定を組んでいる。
「……よかった。キアがもし心変わりをしていたらと思うと何だか寝付けなくて。心変わりをしていたら、キアが思い直してくれるよう、夢の中まで俺で埋め尽くそうと思っていた」
え?それに、一体何の意味が?
てか、夢の中にまで潜り込めるの?フィーったら。
「楽しみだな」
「うん、楽しみ!」
新しくいただく領地にはレナンとジークさん、ここに来てくれている侍女、護衛騎士たちも一緒に来てくれる。
そして領地に新設された冒険者ギルド支部にはなんと、レナンの姉であるリアも移住することになっている。アリーやショコラと離れ離れになるのはちょっと寂しいが、リアやレナン、ジークさんも一緒に来てくれることは嬉しい。
しかしその前に、運命のパーティーを乗り越えなくっちゃね。
身に纏うのは、フィーの色のドレス。そして手首にはあの御守りの翡翠のブレスレット。
「大事にしてくれているね」
フィーが身に付けるスーツは、王族のものにしては簡易的だが、それも本人の身体のため。陛下もマティアス王太子殿下も、その着用を認めている。
「当然よ。私の宝物だわ!」
「キア……っ」
するとフィーが突然私を抱き締めてきたのだ。
「ひゃ……っ!?」
「ふふ……っ、愛してるよ、キア」
「……んもぅ、私もよ」
その優しさが、温もりが、何よりも愛おしい。私の大切な大切な旦那さま。
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