第19話 キャルロット公爵令嬢
――――王太子殿下と王太子妃殿下との晩餐会の準備をしつつ、本日私は大切なお客さまを迎えた。
「うわぁんっ!キア聞いてよ~~っ!」
馬車から降りるなり、ガバッと飛び付いてきたツインテールの彼女を受け止める。冒険者ですからね、令嬢ひとりを受け止めるくらいの技能はあるのよ。ま、ショコラも分かっていてやっているわけだが。
「ずいぶんと元気な友人たちだね」
しかし私の隣から響いた声に、ショコラがハッとして顔を上げる。
そしてキャルロット公爵令嬢であるショコラも、王室名鑑には目を通している。だからこそ、その人物が誰なのかを一瞬で理解する。そしてショコラの保護者がすかさず彼女から引き剥がして姿勢をたださせる。
ルーク兄さん……婚約者と言うよりも……今回のポジションが保護者なのはどうなんだか……。
しかしショコラも公爵令嬢。すぐに何事もなかったかのように優雅にカーテシーをする。
「本日はお招きいただきありがとうございます、第3王子殿下」
「あぁ、よく来た」
今日は調子のいいフィーは、ジークさんに支えられながらであるが、私と共に出迎えをしてくれたのだ。
そしてショコラに続きふわりと礼をしたのは、共に来たリアと、アリーである。リアは安定の鋼メンタルだが、アリーは緊張で目を回しそうな勢い。まぁ、ふたりにとって、城に招かれるなんてこと、多分人生初だろうしなぁ。キャルロット公爵家にはたびたび4人でお泊まりはしているものの、キャルロット公爵家とはまた違う、王族の住まいである。
ふたりの身分は平民なので、いくら私が招いたとしても、平民が第3王子の離宮へ招かれたとなれば騒ぎになる。外は騒がしいし、王妃やヴィクトリオに目を付けられたくはない。だからこそ、本日はショコラの侍女として同行している。
そうすれば、キャルロット公爵家所属となるので、王妃やヴィクトリオも容易には手を出せないのよ。まぁ、出したら最後、師匠を始めとした冒険者たちに逆襲されると思うけど。
エリオットさんもキャルロット公爵も、別に止めないどころか推奨すると思うし。でも王太子殿下の作戦もあるので、なるべくことを荒立たせたくはない。
しかし、息抜きも必要だとキャルロット公爵に勧められたこともあり、こうしてショコラたちが会いに来てくれた。離宮の外では侍女として……挨拶もしっかり覚えてきてくれたようで、ありがたい。
しかし中のサロンでは、友人として語らう。
そして今回は離宮の主であるフィーと、リアの弟であるレナンも一緒である。
ジークさんは護衛とフィーの介助、そして侍女を務めるお姉さんたちがお茶菓子を用意してくれる。
さらに……。
「相変わらずかわいいわねぇ」
「殿下にはちゃんと挨拶できた?優しいお方だから大丈夫よ」
「アリー、そんなに緊張しないで、何かあったらフォローするわよ」
冒険者でもある彼女たちは、もちろん王都ギルドの名物3人娘のことは熟知しており、華麗にフォローしたり、言葉をかけてくれる。何から何まで、お世話になりっぱなしね。
そしてお茶で一服したところで。
「ショコラ、その髪飾りってもしかして……」
「そうなの、ルークがくれたのよ」
ショコラが髪に付けたアクセサリーを見せてくれる。
上品でかわいらしいそれは、公爵令嬢の装いにもマッチしている。それでいて、華美すぎないから普段も付けられるわね。まさに虫除けとして役立ってくれそう。
ルーク兄さんもそれを選ぶとは……なかなかいい目利きだわ。
「やるわね」
そう、護衛として控えているルーク兄さんに小声で投げ掛ければ、何だか照れたように顔を反らしてしまった。全く……ショコラに関することに対しては、相変わらずかわいらしい反応をするのよね。
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