第15話 私の居場所
――――途中思いもよらぬ出来事があったものの、無事に離宮へ戻ってくれば、フィーからぎゅむっと抱き締められてしまった。
「あの……フィー?」
「大変なことがあったのだろう?大丈夫だったか?」
「……う、うん。あの場では私が一番強かったし」
その後はもっと強いルーク兄さんや、屈強な冒険者たちが来てくれたもの。
「それでも……無事で良かった」
フィーが安堵してくれる。こうして本気で心配してもらえるのは、幸せね。
――――しかし。
「もう報せが入ったの……?」
「当然だよ。女友だちが一緒とは言え、キアをひとりで外出させたんだ。何かあれば、すぐに分かる」
護衛を付けてくれたんだろうか……?うーん、私は気が付かなかったけど、それほどまでにすごい護衛を……?
単なる女子同士のお買い物だったと言うのに。
「でも、フィーがくれたブレスレットのお陰で助かったわ」
「お役に立てて何よりだよ」
フィーが満足げに微笑む。
「それに、ワンピースともよく合ってる。今日のキアはとってもかわいいよ」
「あぅ……っ、フィーったら……」
同じ女子でも、レベルの高い3人がいるから……私はそんなには……。とも思いつつも、その3人の友人たちが店員と共に見立ててくれて、褒めてくれたのだから……自信は持たないとね。
「あ、ありがとう」
褒めて、もらえたのだから。
「どういたしまして」
フィーの微笑みは、自信を持って正解なのだと言ってくれているようでホッとする。
――――そして。
「取り敢えず、お茶でも」
折を見て、レナンが私たちにお茶を出してくれる。フィーがそのまま隣にと示してくれたので腰掛ける。
レナンにも心配かけちゃったわよね。
お茶を召し上がりながらも、マジックバッグから本日のお土産を披露する。
「フィーには、露店の菓子を持ってきたのよ」
王子さま向けではないかもしれないが、私の冒険者仕込みの料理も美味しいって食べてくれるし……いけるかしら。
「へぇ、これは?」
フィーが興味津々に見てくれる。
「さつまいものお菓子で、蜜飴がかけてあるの」
甘いものも平気だと思うし……何より私の好物だ。初めてクエストを成功させた時に、師匠が奢ってくれた思い出の品でもあるのよ。まるで宝石みたいな、キラキラした甘いお菓子。
「とても美味しそうだ」
フィーが微笑んでくれる。
早速つま楊枝にさつまいもを一つ刺してフィーに差し出す。
「ある意味宝石みたいだ」
「……っ、それもそうね!」
まさかフィーも同じような感想を言ってくれるとは。
「ん……味も美味しい」
「でしょう?」
フィーと共に微笑み合いつつ、レナンとジークさんの分も取り出し、お裾分けする。あれ……?そう言えばジークさんって……。
「あの、甘いもの、大丈夫でしたか……?」
いつもの晩餐はレナンと作る。4人分作っているとはいえ……レナンとジークさんは交替で別途食べているはずだ。レナンは何も言ってこないし、特段苦手と言うわけでもないと思うのだが。
「別に」
そう言って普通に食べ始める。レナンも普通に食べているが……ジークさんもわりといける口……なのね。
「ジークはわりと、甘いものは好きだぞ」
そう、こっそりとフィーが耳打ちしてくれた。
「……フィー」
しかし、それを感じ取ったのか、ジークさんがフィーに微妙そうな視線を送る。
「別に構わないだろう?俺たちは家族なんだから」
家族……。一応主人と騎士と言う関係ではあれど……そうか、家族。
いつの間にか私も、こんな温かくて優しい家族の中にいたのね。
リビングに響く穏やかな談笑に、いつしかここが、掛け替えのない居場所なのだと感じている。
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