第13話 王都探索
――――私は今日、王都の城下町に来ている。
しかし……。
「うぐ……っ、くらくらする……っ!キラキラとした女の子のカワイイが溢れてる……っ!」
「いや、キアもカワイイ女の子なのよ?」
ショコラに呆れられつつも、今日はショコラ、リア、アリーと女子4人でショッピングに来ていた。
しかもショッピングに来た区画は、いつもの武器屋や装具店、酒場などが並ぶ冒険者や旅人たちが多く立ち寄る区画ではない。
女友だちと遊びに来たり、デートを楽しんだり、いわゆる貴族のお忍びで訪れたりするおしゃれな区画。
カワイイ雑貨屋やブティック、カフェにスイーツ。思わず目移りしそうと言うか、周りのひとびともお店も、キラキラしてるぅ~~っ!
これは王城や貴族の煌びやかさとは全くの別物。庶民から貴族のお嬢さまにまで愛されるカワイイ空間……っ!
「私、場違いじゃないかしら」
普段着のワンピースで来てしまったのだが、他の3人はかわいくおしゃれしているし。
「なら、早速ブティックに行くよ~~っ!」
「ええぇっ!?」
ショコラに腕を引かれれば、リアとアリーもノリノリで背中を後押しする。
「どんな色が似合うかしら」
「とてもかわいらしいお嬢さまね。見立てがいがありますわ!」
ショコラも店員たちも、何故かノリノリだし……。
「その翡翠のブレスレット、ステキですわ!彼氏さまからの贈り物で?」
服を合わせながらも、店員が問うてくれる。
「これは……婚約者から……」
その、さすがに第3王子だとは言えないけれど、それくらいなら大丈夫よね。
「まぁっ!素晴らしいですわ!ではそちらに合うワンピースを用意しませんと……!」
それはそれで……ありがたいわね。
「ラブラブで羨ましいなぁ」
ショコラがふと呟く。そう言えばショコラもアクセサリーは身に付けているが……。
うーん、ルーク兄さんは普段アクセサリーとか……あまり贈らなさそうよね……?
「虫除けは……必要」
リアがボソッと呟く。
「そうよね。馴染みの冒険者なら、ショコラとルークさんが婚約者だって知ってるけど……外から王都を訪れたり、新米だったりすると、ショコラったらよく熱い視線を送られているもの」
と、アリー。そりゃぁ命知らずな……ショコラに手を出そうものなら、ルーク兄さんに冒険者として強烈な洗礼を喰らうわよ。
「ぱぱに頼もうか?」
「それはレナンに苦情が行くと思うわ」
ルーク兄さんなら誰経由かどうか一瞬で分かるだろうし、分かったら分かったらで、リアに言うと師匠から怒られるだろうから、多分……いや絶対レナンに言うわよね……!?
「んもぅ……私から言うから」
ルーク兄さんの妹代わりとしてね。
「あはは、それが一番だよねぇ」
アリーが微笑む。
「ふふっ、さっすが私の親友っ!」
ショコラがにこりと笑んでくれる。
ルーク兄さんを後で捕まえておこう。そこら辺に関しては、他の冒険者に言っておけば足止めしてくれるはず。私が呼んでるって言えば、待ってくれると思うし。
そして私は……。
「こちらを……!」
店員が用意してくれたキャメルのワンピースは、フリルやリボンがついていてかわいらしいデザイン。今まではこう言ったかわいらしいデザインのものとは無縁だったけれど……。
「旦那さまに見せてあげたら、きっと喜ぶよ!」
ショコラにこそっと耳打ちされ、何だかこっぱずかしくなりつつも……喜ぶフィーの顔は見たいと思うのだ。
「料金はうちに付けておいて。キャルロット公爵家よ」
「承知いたしました」
さすがは庶民のお嬢さまから貴族のお嬢さままで幅広く利用するブティックの店員。キャルロット公爵家の名にも驚かず、上品に応じる。でもさすがに王家は驚くだろうから……今回のショッピングにかかる代金は、キャルロット公爵家経由で王城に請求してもらうことになっている。
「でも……いいのかしら」
「当然よ。何せ、旦那さま自らお勧めしてくださったんだからねっ」
うん……ショコラの言うとおり、自分が行けない分、料金は出させてくれとフィーからお願いされてしまった。しかもキャルロット公爵家経由で請求する手はずも済んでいたのである。
気が付いた時には囲い込まれていたもので。断るのも逆にフィーのメンツを傷付けるから、こうして来てしまったのだが。
「プレゼントだと思って受け取るのがいいわ!」
「うん、そうするわ」
ヴィクトリオからは何ももらえなかったもの。もらったのは膨大な執務だけである。
だからこうして気を回してくれることが嬉しい。
「とってもお似合いです!」
「かわいい!」
「……ん、似合ってる」
そして着替えてみんなの前に出れば、目一杯称賛してもらえた。
「これからはもっともっと、おしゃれしないとねっ!」
そう、ショコラに勧められる。おしゃれ……か。今までは仕事にクエストにと余裕がなかったけど……今は離宮のお仕事の中にクエストや、こうしてリフレッシュする時間も入れてくれているのよね。なら……少しは……楽しんだ方がフィーも喜んでくれるだろうか。いや……むしろフィーは、楽しんでおいでと背中を押してくれるたちであろう。
本当にフィーに拾ってもらってよかったかも……。そう、安堵していた時だった。
「ちょっと!早くカシュミアを出しなさいよ!」
げ……。この甲高い我が儘声は。
「ストールでも、コートでも何でもいいわ!私はカシュミアが欲しいの!私はメローディナ公爵令嬢で、第1王子の婚約者よ!?未来の王太子妃なのよ!!」
何事かと声のする方を見れば、やはりそこにいたのはマリーアンナである。
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