3話目
ある日こんな記事を目にした。
【若き女性作家 自宅で死亡未遂】
俺はその記事が妙に気になり、ブラウザを開いた。そこには、新人賞を受賞した若い女性作家が、薬を大量に飲み自殺未遂をしたと書いてあった。続きをスクロールした瞬間俺は息を呑んだ。
そこには作家の顔と名前が載っていた。
面影のある目元、口元、同じ位置にある黒子。そして忘れもしない彼女の名前、細谷夏希の名前がそこにはあった。
俺の頭の中は疑問符だらけだった。どうして自殺未遂なんかしたのだろう、何が彼女を傷つけたのだろう、どうして相談してくれなかったんだろう、どうして、どうして——
答えなんてわかるはずのない問が、ひたすら心を掻き乱した。だが、一番俺の心を深く抉ったことは、俺が彼女を知らなすぎたということだ。彼女はずっと作家になることを夢見ていた。きっと彼女は夢を叶えると、俺も信じていた。ならば、毎年新人賞にノミネートされた作家を見ておけばよかった。いや、食わず嫌いなんてしてないで、新刊を手に取っていればよかった。ならもっと早く気づくことができたのに、声をかけることができたのに。俺は昔から無力でノロマな人間だと自覚していたけれど、ここまで酷いとは思ってもなかった。ずっと俺は自分に失望し続けている。俺は俺が一番嫌いだ。だがずっと意気消沈している暇はない。間に合わなかったけれど、全部こぼれ落ちたわけではない。まだ夏希は生きているんだ。俺はネットで彼女の処女作から最新作まで全てを注文した。ここから始めよう。知らなかった夏希を知るために。
フィクション ぺんてる @hare0515
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