なか
命が枯れつつある冬、やっと息がしやすい季節が巡ってきた。夏は良くも悪くもエネルギーがありすぎるのだ。ただでさえ軽く人が死ねる暑さなのに、明るい人間はその暑さにすら熱狂する。きっと、そのエネルギーを吸収できるかできないかで、この世の生きやすさは変わってくるのだろう。例にも漏れず、俺は後者側の人間だ。
小学生の頃、夏希しかろくな友人がいなかった俺が、中学、高校とどんな学校生活を送ってきたかなんて容易に想像が着くだろう。幼少期から人見知りであったが、歳を重ねるごとに人と新しい関係を築くのが面倒臭いと感じるようになってしまった。きっとそれは上手く人間と関われなかったためのの言い訳に過ぎないのだろうが、齢20歳にしてその考えに縋りついて生きるしかなかった。
だが、そんな俺にも趣味ぐらいある。それはやはり読書だった。唯一の趣味も他人の受け売りだと思うと大分不甲斐ないが、俺と彼女の共通点だと思うと、心なしか悪い気はしない。
よく読む本といえば、大体一昔前の中古で100 円で売られているようなものだ。最新作を読むのはミーハーっぽい、と言う逆張り精神が働いているのも否めないが、少しくたびれた本の方が手に馴染むのも確かだった。
本は20年も経てば昔の名作に分類されるのに、人間は20年生きたところで、他人からサムズアップされながら社会と言う奈落に落ちるだけだ。幸福な人生といっても、大学デビューが決まって近くの女を手当たり次第喰いまくるのが関の山だろう。
なら一度手放された、長らく人目を浴びていない、所謂”凡作”を選びたがるのが、奈落堕ちした人間の性だ。一度人に買われたと言う事実がある時点で、俺と本には雲泥の差があるのだけれど。
だが、その俺の腐りまくった性根のせいで、この単調な生活は一変することになる。
フィクション ぺんてる @hare0515
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