第3話 2004年、明智龍一15歳の話

 2004年、明智龍一は15歳。彼の住む町は、東京の郊外に位置する閑静な住宅街で、どこか古びた雰囲気を漂わせていた。彼は普通の中学生とは違い、常に鋭い観察眼を持ち、クラスメートや教師たちの些細な仕草や表情の変化を見逃さなかった。


 当時、龍一はまだ自分の将来について漠然とした不安を抱いていた。彼は自分の能力に気づいていたものの、それをどう活かすべきかが分からなかった。周囲の期待は、彼を優等生に仕立て上げようとしていたが、彼自身はそれに応えようとは思わなかった。彼が真に興味を持っていたのは、真実を探り当てること、そして人の心の奥底に潜む闇を暴き出すことだった。


 ある日、龍一は町の小さな書店で一冊の古びた推理小説を手に取る。その本は、彼の祖父が愛読していたものであり、龍一にとってはどこか懐かしいものであった。家に持ち帰り、その本を読み進めるうちに、龍一は一つの真実に気づく。祖父の過去に何か大きな秘密が隠されているのではないかという疑念が、彼の胸に芽生えたのだ。


 その頃、町では奇妙な事件が立て続けに発生していた。古びた屋敷で何者かによる連続失踪事件が起こり、警察もその原因を突き止められずにいた。龍一は、この事件に何かしらの関連があると感じ、独自に調査を始めることにした。


 彼は昼間は学校に通い、夜になると密かに事件の現場を訪れるようになった。手がかりを一つずつ集めていくうちに、彼は自分がこの事件の中心に巻き込まれていることに気づく。しかし、彼は恐れることなく、真実を追い求め続けた。彼の鋭い推理と冷静な判断力により、ついに事件の背後に潜む黒幕を暴き出すことに成功した。


 この経験を通じて、龍一は自分の使命を確信するようになる。それは、どんなに暗い闇に包まれていようとも、必ず真実を明らかにするという決意であった。彼は、この年を境に本格的に探偵としての道を歩み始めることとなる。


 龍一が15歳のある日、彼はいつものように学校へ向かっていた。夏の終わりが近づき、蝉の声がかすかに聞こえる中、彼の心は前夜の出来事でざわついていた。昨夜、古びた屋敷を訪れた際に得た新たな手がかりが、彼の胸に不安と興奮を同時に呼び起こしていた。


その日、学校では期末テストが近づいており、クラスメートたちもいつになく真剣な面持ちで授業を受けていた。教室の中でただ一人、龍一は別のことを考えていた。彼は黒板に書かれた数式を眺めながら、失踪事件の謎をどう解明するかに思いを巡らせていた。


「龍一、またぼーっとしてるでしょ?」


 隣の席から声が聞こえた。声の主は加藤明日香、龍一の幼馴染であり、クラスの中でも特に明るくて活発な少女だった。彼女は、クラスメートや先生たちにも好かれており、その純粋で真っ直ぐな性格は、龍一とは対照的であった。


龍一は一瞬驚いたように彼女の方を向いたが、すぐに穏やかな表情を浮かべた。「いや、そんなことないさ。ちょっと考え事をしていただけだ」


明日香はふくれっ面をしながらも、すぐに笑顔を取り戻した。「また探偵ごっこでもしてるんでしょ?最近、何か面白いことでも見つけたの?」


龍一は、彼女の好奇心旺盛な瞳に一瞬ためらいを覚えたが、彼女には何も隠せないと悟った。「まあ、少しね。けど、これ以上は教えられないな。まだ確証がないんだ」


明日香は少し不満げに肩をすくめたが、それ以上は深く追及しなかった。彼女は龍一のこうした性格をよく理解しており、あまり強引に聞き出そうとはしないのだ。


「わかった。でも、もし手伝えることがあったら、いつでも言ってね。私、龍一の探偵ごっこを一緒にやるの、結構好きなんだよ」


龍一はその言葉に軽く笑みを浮かべた。明日香は、彼の孤独な調査を唯一理解し、支えてくれる存在だった。彼女の明るさと前向きな姿勢が、龍一にとっては何よりも貴重だった。


その日、放課後になると、龍一は再び古びた屋敷へと向かう決意を固めた。だが、今度は一人ではなく、明日香も同行することになった。彼女の好奇心と勇気が、龍一の緻密な計画に新たな視点を加えるかもしれない。


二人は夕暮れ時、屋敷へと続く小道を歩いていた。薄暗く、静寂に包まれたその場所は、不気味な雰囲気を漂わせていたが、明日香は怯むことなく、龍一の隣を歩いていた。


「龍一、やっぱりここには何かがあるんでしょ?ただの噂じゃないんだよね?」


龍一はうなずき、屋敷の方を見つめた。「ああ、この場所には確かに何かが隠されている。僕たちがその真実を見つけ出すんだ」


その夜、二人は屋敷の中で不思議な手がかりを次々と発見することになる。それは、龍一の推理をさらに確信へと導くものだった。そして、彼らの前に立ちはだかる真実は、想像を超えるものだった。


龍一と明日香は、その日を境に強い絆で結ばれる。二人で謎を解き明かす日々は、彼らの中学時代において、かけがえのない思い出となっていった。


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影の虚空譚 鷹山トシキ @1982

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