第3話

その晩、夏と瑠璃が一緒にゲームをしていると、突然、外で雷が轟き、瞬く間に部屋の電気が消えた。音と光が一瞬で消え去り、真っ暗な部屋の中で二人は驚きの声を上げた。


「え、停電?」と瑠璃が不安そうに言った。


「うん、どうしよう。ゲームも止まっちゃったね」と夏が答えた。


二人は手探りで懐中電灯を探し、ようやく見つけると、その光で部屋の中を照らした。外は激しい雨が降りしきり、雷が不規則に光っていた。


「こんな中でゲームができるわけないね」と瑠璃が言い、ちょっと笑った。「でも、ねこまるに会えないのは残念だな。」


「うん、また一緒に遊びたかったね」と夏が頷いた。


その時、窓の外で何か動く影が見えた。雨に濡れた猫がふらふらと歩いているのが見えた。夏が窓に近づき、その猫をじっと見つめた。


「見て、外に猫がいる!」と夏が瑠璃に呼びかけた。


「ほんとだ、雨の中で濡れてるね。かわいそうに」と瑠璃が心配そうに言った。


「ちょっと見てくるよ」と夏が言い、傘を持って外に出た。雨に濡れながら、猫に近づくと、その猫は震えながらもじっとしていた。


「大丈夫?中に入っておいで」と夏が優しく声をかけると、猫は少し震えながらもゆっくりと夏の方に近づいてきた。


夏は猫を家の中に招き入れ、リビングのソファの上にタオルを敷いて、その上に猫を乗せた。猫は疲れた様子で体を丸め、静かにしていた。


「これで温かくなったかな?」と夏が言いながら、タオルを猫にかけた。


すると、猫がふと顔を上げ、「ありがとうまる、ここで温まるまる」と言った。


「え?」と夏は驚いてその猫を見た。猫が話しているわけがないと思いながらも、その猫がどこかで見たことがあるような気がした。


「ねこまる?」と瑠璃が部屋に入ってきて、びっくりした様子で猫を見た。「もしかして、これは…?」


「はいまる、私がねこまるまる」と猫が自信たっぷりに答えた。


「本当に?でも、どうしてここに?」と夏が聞いた。


「ゲームの中から、君たちのところに来たまる。雷でゲームが止まってしまったから、出てきたまるよ」とねこまるが説明した。


「それなら、どうして私たちのことを知っているの?」と瑠璃が尋ねた。


「君たちと一緒に冒険して、君たちのことをよく知っているまる。今、君たちが必要だと思って、手伝いに来たまるよ」とねこまるが答えた。


夏と瑠璃は驚きながらも、ねこまるが本当に彼女たちを助けに来たことを理解し、感謝の気持ちを込めて笑顔でねこまるを迎え入れた。停電の中、二人とねこまるの不思議な出会いが、新たな冒険の始まりを予感させた。

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