第17話「最後の選択」

カフェ「黄色いチューリップ」での会話の直後、大樹、宮崎、そして萌果の三人は、店内に重い沈黙が漂っていた。夕暮れが過ぎ、外は暗くなり、カフェの温かな光が三人を照らしていたが、その場の空気は重く、誰も次の言葉を発することができずにいた。


大樹は目の前にいる二人を見つめ、心の中で渦巻く感情を整理しようとしていた。宮崎の真剣な告白、そして萌果の優しさに触れ、自分がどうすべきかを考え続けていたが、どちらの気持ちも大切にしたいと思う一方で、それができないことに胸が締め付けられる思いだった。


宮崎はその沈黙に耐えられず、ついに口を開いた。


「私、黒羽のことが本当に好き。でも、それが私だけじゃなくて、萌果さんも同じだって分かってる。だから、こんな風に気持ちをぶつけて、みんなを困らせてしまったかもしれない……」


彼女の言葉に、大樹は返事をしようとしたが、どう言葉にすればいいのか分からなかった。その時、萌果が静かに言葉を紡ぎ始めた。


「宮崎さん、あなたの気持ちが真剣なことは分かってる。そして、私も大樹くんのことを特別に思ってる。だからこそ、今ここでお互いの気持ちを確認し合いたいの」


萌果は宮崎と大樹を交互に見つめながら続けた。


「私たちはそれぞれ、大樹くんに対して特別な感情を抱いているけど、今この瞬間にどう感じているのかをしっかり考えたいの。大樹くん、あなたの気持ちはどうなの?」


萌果の問いに、大樹は深く息を吸い込み、ついに自分の気持ちを言葉にしようと決心した。


「正直に言うと、僕は二人のことが大切だ。宮崎も萌果さんも、どちらも僕にとって大事な存在だって気づいた。でも、そんな中で、誰か一人を選ぶことが、すごく難しいんだ」


彼の言葉に、宮崎も萌果もじっと耳を傾けたが、それぞれの表情には複雑な感情が浮かんでいた。大樹はさらに続けた。


「今の僕には、誰か一人を選ぶことはできないかもしれない。でも、それでも二人のことをこれからも大切にしていきたいと思ってる」


その言葉に、宮崎は少しだけ微笑んだが、その目にはどこか寂しさが滲んでいた。彼女はゆっくりと立ち上がり、萌果に向き直った。


「萌果さん、ありがとう。正直に話してくれて。でも、私もこの気持ちを簡単に諦めることはできないから、これからも自分の気持ちに正直に生きていきたいと思う」


萌果もまた、彼女の言葉に頷きながら微笑んだ。


「私も同じ気持ちよ、宮崎さん。私たちはお互いに正直でいましょう。そして、大樹くんにも同じように正直でいましょう」


三人の間に再び静寂が訪れたが、それは重い沈黙ではなく、お互いを尊重するための時間のようだった。それぞれの気持ちが明確になり、関係がどう変わるかはまだ分からないが、少なくとも彼らは今、正直に向き合い始めた。

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