第13話「揺れる想いとすれ違う心」
宮崎が、大樹と萌果の間に感じた違和感は、日が経つごとに強まっていった。彼女は自分の心に芽生えた感情を整理しきれず、カフェ「黄色いチューリップ」を訪れることにした。
カフェに入ると、いつものように温かな雰囲気が迎えてくれたが、宮崎の心はどこか落ち着かなかった。カウンターには萌果が立っており、彼女が笑顔で「いらっしゃい」と声をかけてくれた。
「こんにちは、萌果さん。今日は一人で来ちゃった」
宮崎は無理に明るく振る舞いながら席に着いた。萌果は彼女の様子に少し不安を感じながらも、いつも通りの優しい態度で接した。
「何か特別な飲み物を作ろうか?」
「ありがとう。今日は少し甘いものが飲みたいかな」
萌果がコーヒーを淹れている間、宮崎はぼんやりと店内を見渡した。大樹がここで過ごす時間や、二人の親しげな様子が思い出され、胸が少し苦しくなった。
その後、大樹がカフェに入ってきた。彼は宮崎が一人でいるのを見つけ、驚いた様子で「宮崎、今日は一人なんだね」と声をかけた。
「うん、たまには一人でゆっくりしようかなって思って」
宮崎はそう答えたが、内心では大樹と萌果がどんな風に接しているのかを見たいという気持ちがあった。しかし、二人が自然に会話を始める姿を見ていると、自分がその輪に入り込めないような気がして、胸がざわついた。
「大樹くん、今日は何か特別な予定があるの?」
萌果が尋ねると、大樹は少し考えた後「いや、特にないよ。ここに来ると、なんだか落ち着くから」と答えた。その言葉に、宮崎は少し安心したが、同時に自分が感じている不安が何なのか、はっきりと理解できないまま黙り込んでしまった。
その後、三人で話をしていると、宮崎は自分が二人に対してどれほど特別な感情を抱いているのかを痛感した。萌果に対しては友達としての親しみと共に、彼女が大樹に向ける視線に嫉妬心を抱いていることを認めざるを得なかった。
「そろそろ帰ろうかな」
宮崎は突然立ち上がり、そう告げた。大樹は「もう帰るの?」と少し驚いたが、彼女の表情に何かを感じ取り、それ以上何も言えなかった。
「また明日、学校でね」
宮崎はそう言い残し、カフェを後にした。彼女の背中を見送る大樹と萌果は、どちらも心の中で何かが引っかかっているのを感じた。
カフェを出た宮崎は、胸の中に湧き上がる感情を抑えきれず、涙がこぼれそうになるのを必死に堪えていた。彼女は自分の気持ちを正直に認めるべきだと分かっていたが、大樹と萌果の関係を壊すことを恐れていた。
一方、カフェに残った大樹と萌果も、宮崎の様子に何か異変を感じていた。二人は何も言わずに顔を見合わせたが、言葉にできない感情が心に渦巻いていた。
「宮崎、何か悩んでるのかな」
大樹がそう呟くと、萌果は少し間を置いて答えた。
「もしかしたら……でも、私たちが話すことじゃないかもしれないわね」
その言葉に、大樹は少し考え込んだ。彼は宮崎のことを心配しつつも、今何をすべきかが分からなかった。ただ、自分の心の中にも新たな感情が芽生え始めていることに気づいていた。
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