第11話「過去と向き合う時」

イベントが成功裏に終わり、カフェ「黄色いチューリップ」は再び日常を取り戻していた。しかし、そんな中で大樹はふとした瞬間に過去の記憶に囚われるようになっていた。特に、最近頻繁に夢に出てくる中学時代の友人・達也との出来事が心に引っかかっていた。


放課後、大樹はいつものようにカフェを訪れたが、今日は少し様子が違っていた。萌果と宮崎が楽しそうに話している様子を見て、大樹は何故か心がざわついた。


「黒羽くん、大丈夫?今日は元気がないみたいだけど」


萌果が心配そうに声をかけてくれたが、大樹は「うん、大丈夫だよ」と笑顔で応えたものの、自分の気持ちをうまく説明できなかった。


その夜、大樹は再び達也との過去を思い出していた。達也が突然転校した日のこと、大樹が彼に対して何もできなかったことが、今でも心の中で重くのしかかっていた。


「自分は、あの時から何も変わっていないんじゃないか……」


そんな思いが頭をよぎり、大樹は自己嫌悪に陥ってしまった。翌日も学校で友人たちと話す気力が湧かず、カフェでも静かに時間を過ごしていた。


しかし、ある日、宮崎が大樹に声をかけた。「黒羽、最近どうしたの?なんか一人で考え込んでるみたいだけど、私たちで力になれることがあれば言ってよ」


宮崎の言葉に、大樹は少し驚いたが、彼女の真剣な眼差しに自分の気持ちを隠しきれなくなった。彼は過去のこと、達也との別れ、そしてその後に感じた孤独や無力感について話し始めた。


「それがずっと心の中に引っかかってて……自分は何も変わっていないんじゃないかって」


大樹の告白に、宮崎は静かに頷いた。「その気持ち、わかるよ。過去の出来事がずっと心に残ってると、前に進むのが怖くなるよね」


その後、萌果も話に加わり、彼らは過去をどう受け入れ、今をどう生きるかについて話し合った。萌果は自分の過去の失敗を乗り越え、カフェを引き継ぐことで新しい道を見つけた経験を共有し、大樹に勇気を与えた。


「過去は変えられないけど、それをどう乗り越えるかが大事だと思う。黒羽くんも、自分のやりたいことを見つけて、それに向かって進めばいいんじゃないかな」


萌果の言葉に、大樹は少しずつ心が軽くなるのを感じた。彼はこれまで自分がどれだけ変わってきたのか、そしてこれからどう成長していくのかを考え始めた。


その後、大樹はカフェでの時間を通じて、自分が少しずつ成長していることを実感した。宮崎や萌果との関係もより深まり、彼は過去の影に囚われることなく、前向きに生きていこうと決意する。


「今度こそ、自分の力で未来を切り開いてみせる!」


大樹はそう心に誓い、新たな一歩を踏み出そうとする。この決意が、彼をさらに成長させ、新たな挑戦へと導いていく。

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