第8話「カフェに訪れた危機(後編)」

次の日から、大樹と宮崎は学校で友達に声をかけ、カフェ「黄色いチューリップ」で行われるイベントの告知を始めた。ポスターも完成し、街中の掲示板や商店街の店先に貼り出され、少しずつ注目を集め始めた。


イベントの内容は、カフェの特製ドリンクの試飲会や、宮崎が企画したお絵描きコンテストなど、地域の人々が楽しめるものに決まった。さらに、常連客との交流を深めるためのトークセッションも企画され、カフェの魅力を存分にアピールできる内容となった。


イベント当日、カフェ「黄色いチューリップ」はこれまでにない賑わいを見せていた。大樹と宮崎が準備したポスターやSNSでの告知が功を奏し、カフェには多くの人々が集まっていた。


「思った以上に人が来てくれてる!」


萌果は驚きと喜びが入り混じった表情で、カフェに来たお客さんを迎えていた。彼女が淹れた特製ドリンクが次々と試飲され、お客さんたちの評判も上々だった。


一方で、宮崎のお絵描きコンテストには地元の子どもたちが参加し、店内は笑顔と笑い声で溢れていた。大樹は、カフェの魅力を伝えるトークセッションを進行し、常連客たちとの交流を楽しんでいた。


「このカフェって、ほんとに素敵な場所だね」


参加者の一人がそう言った時、大樹は心の中で達成感を感じた。このカフェが持つ温かさと居心地の良さが、多くの人に伝わっていることを確信した。


イベントが成功を収めたことで、カフェ「黄色いチューリップ」は再び多くの人々の注目を集めるようになった。商業施設の開業に伴う危機は避けられたわけではないが、カフェの存在感が地域で一層強くなったことで、今後も続けていく自信が生まれた。


「みんなのおかげで、カフェがこんなに賑わっているなんて、本当に嬉しいです」


萌果は、大樹と宮崎に感謝の言葉を述べた。二人は微笑み返しながら、カフェが再び活気を取り戻したことに喜びを感じていた。


その日の帰り道、大樹はふと考えた。ここで得た経験が、彼にとって大きな自信となり、今後の人生にも影響を与えるだろうと。


「これからも、この場所を守っていきたい」


大樹は心の中でそう誓い、カフェ「黄色いチューリップ」を後にした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る