第6話「同級生との思いがけない再会」
放課後、黒羽大樹はいつものようにカフェ「黄色いチューリップ」へと向かっていた。最近では、ここが彼にとっての日常の一部となり、学校の後に寄るのが当たり前になっていた。
カフェに入ると、いつも通りの温かい雰囲気が広がっていた。しかし、今日は店内の一角で見慣れた制服が目に入る。驚いたことに、同じ高校の同級生である宮崎が座っていた。宮崎はクラスでも明るく、友達が多い人気者だったが、二人は特に親しいわけでもなかった。
「宮崎……?こんなところで何してるんだ?」
大樹は驚きながらも、思わず声をかけた。宮崎もまた、彼に気づいて顔を上げた。
「黒羽?ここで何してるの?こんなところにカフェがあるなんて知らなかったわ」
宮崎は驚いた様子で彼に返事をした。大樹は少し照れくさそうに笑い、「たまたま見つけて、通うようになったんだ」と答えた。
宮崎は、最近学校のことで悩みがあり、一人で考え事をしたくてたまたまこのカフェに立ち寄ったのだという。普段は友達と賑やかに過ごすことが多い彼女だが、今日は一人になりたかったらしい。
「こんな素敵なカフェがあったなんて、全然知らなかった。黒羽、ここでよく時間を過ごしてるんだ?」
宮崎の問いかけに、大樹は「うん、ここが落ち着くから」と答えた。いつもとは違う宮崎の静かな一面を見て、彼女が何か悩みを抱えていることを感じ取った。
その時、萌果が宮崎のテーブルに来て、優しい笑顔で「何かお好きな飲み物をお持ちしましょうか?」と声をかけた。宮崎は少し戸惑いながらも「おすすめをお願いします」と頼んだ。
しばらくして、萌果が特製のハーブティーを持ってきた。彼女が去った後、宮崎は静かにそのティーカップを見つめていた。
「実は、クラスで少し悩んでてさ……みんな明るくて楽しいけど、時々自分がついていけない気がして」
宮崎がそう呟いた時、大樹は彼女のことを親身になって聞く気持ちになった。普段は自分の悩みを打ち明けることが少ない宮崎が、ここで初めて心を開いてくれたのだ。
「僕も、最初はクラスになじめなくて悩んでたんだ。でも、このカフェに来るようになって、少しずつ変わってきた気がする」
大樹は自分の経験を話し、宮崎が安心できるように言葉を選んだ。彼は、カフェ「黄色いチューリップ」が自分にとってどれだけ大切な場所であるかを改めて実感していた。
その日、二人はしばらく話を続けた。宮崎は少しずつ元気を取り戻し、カフェの温かい雰囲気に癒されていくようだった。
「ありがとう、黒羽。なんか、ここに来て少し気が楽になった気がする。また来てもいい?」
宮崎のその言葉に、大樹は笑顔で「もちろん、いつでも」と応えた。彼女が心からリラックスできる場所を見つけたことに、彼もまた喜びを感じていた。
カフェ「黄色いチューリップ」を後にする時、大樹はふと考えた。ここでの時間が、自分だけでなく、他の人にも何か大切なものを与えている。自分がこの場所で得たものを、他の人とも共有できるかもしれない。そう思うと、心の中に少しずつ自信が芽生えてきた。
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