第13話 夏休みの予定2

「美咲ー、行くぞー」


「はーい」


そう言い僕等は家を出た。


「ねぇ、兄さんは夏休み予定とかないの?」


「そんなのあるわけがない」


僕は自信満々にそう言う。


「可哀想だね」

「友達いないんだ」


「うるさいなぁー、仲のいい人ならいるし」


僕は言い返すように言う。


「え、兄さん友達がいるの?」


美咲はびっくりしたように言う。

失礼な妹だ。


「それくらいいるさ」(一人だけどね)


「どんな人?」

「かっこいい?それともイケメン?」

「私に紹介して」


妹は面食いだった。


「いや、男じゃない...」


それを聞いた瞬間に妹の表情が変わる。


「は?女?兄さんに女?」


なんか怖い


「ねぇ、その女の人の名前は?誕生日は?住所は?」

「私より可愛くて、勉強できて、料理もできて優しい人なの?」

「ねぇ、どうなの?」


久しぶりのブラコンモードに僕は圧倒される。


「私以上のスペックじゃないとダメっていつも言ってるよね?」


妹以上のスペックはそうそういないと思うんだが。


「今度、紹介してよ」

「家に連れてきて、私が見極めて上げる」


これはまずいかもしれないと思った。


「そ、そろそろ着くぞ」


「は?話を変えるの?」

「なに?言えない関係なの?」


僕は全て話さないといけない覚悟をしたとき


『水族館オープン』


というポスターが突然目に入った。


「い、妹よ、」


「何?」


「水族館いかないか?」


「つい最近できたやつの...」


僕は必死で話題を変える。


「水族館?」


「そう、水族館」


「わかりました」

「水族館の約束でこの話はやめにしてあげましょう」

「兄さんはどうしても喋りたく無いようなので」


少し機嫌が良くなってくれてたようだ。


「ありがとう」


そう言って、僕たちはスーパーに着いた。


帰り道、


助けてもらったポスターを妹と一緒に見ていた。


「結構すごい水族館みたいだね」


「そうだなー」


「兄さんはいつ頃がいい?」


「いつでもいいぞー、夏休みは1日も予定がないから」


そう言い家に向かって歩き出す。


「良かったね兄さん」

「なにもない夏休みに予定がはいって」


「はいはい、よかった、よかった」


そう僕が言うと、


「ねぇ、今の話どういう事?」


覚えのある声に僕は呼び止められた。

このとき僕は振り向いてはダメだと思ったが、


「ん?」


美咲が振り向いてしまった。


「ねぇ御薬袋くん、私には予定があるって言っといて御薬袋くんは他の女の子とデートしてたんだ」

「どういうことかな?」


「いや、予定があるのは本当でして...」


「それは今できた予定だよね」


「はい」


僕は言い返せない。


「あの、」


美咲が喋りだす。

もしかして僕を助けてくれるのか?


「もしかして、緒方先輩ですか?」


「そうだけど、君同じ高校の後輩なの?」


「そうです、この兄と同じ高校に通ってる1年生です」

「御薬袋美咲と言います」


妹が頑張ってくれてる。兄嬉しい


「兄...もしかして御薬袋くんの妹さん?」


「そうです」


「そうなんだ、ごめん」

「私てっきり.....」


緒方さんの機嫌が少し良くなった。あとは話を終わらせるだけ。


「あの、もしよしければ兄を貸しましょうか?」


妹よ、何を言っているのかな?僕を助けてくれるんじゃなかったのか?


「いいの?」


「はい、いいですよ」

「母には伝えときますので」


そして美咲は僕を見捨てて帰っていった。


「御薬袋くんそこの公園で少し話そうか」


「はい」


僕は公園に行き緒方さんと話をすることになった。


「それで、さっきの話は本当なの?」


「はい」


僕は正直に答える。


「そしたら私にいった予定があるって言ったのも、今親戚の家って言ったのも嘘だったんだ」


「はい」


「なんで嘘をついたのかな?」


「...」


僕は答えられない。


「はぁ〜」


緒方さんがため息をつく。

そうとう怒っているみたいだ。

ただ僕はここでとんでもないことをいってしまった。


「激おこプンプン丸」


ボソッと言っただけだったが聞こえてしまったようだ。


「もう、許さない」

「帰る」


ガチギレだ。


「ごめん」

「本当にごめん」


僕は必死に彼女をなだめようとする。

が、彼女は歩くのをやめない。


「ごめん、なんでも言う事を聞くから」


ピタッと彼女の足が止まる。


「そしたら、このあとの夏休み予定全部あけといて」


やばい条件を出してきた。


「全部はちょっと...」


さすがに全部はダメだ僕にも予定がある。(ダラダラ過ごす予定が。)


「そしたらいい」


彼女は再び歩き出す。


「わ、わかった」

「美咲と水族館に行く日以外は空けとくから」


ピタッ、彼女が止まる。


「約束だから、破ったら許さないから」

「はい」


こうして僕の予定していた夏休みはすべて変更になった。





カチッ


音がなり276→275になる。


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