第9話 体育祭【お弁当タイム】

9.

「おまたせ」


緒方さんがいつもより大きなお弁当を持ってやってくる。しかも2つも。


「お弁当持ってきてないよね?」


「うん」


昨日の夜、緒方さんから連絡があった。


『明日お弁当もって来ないでね』


緒方さんが二人分のお弁当を作ってきてくれるのは分かったが少し申し訳ない気がした。


お弁当の蓋をあける。


そこには、たくさんのおかずが詰めてあった。


とても美味しそうだ。


「「いただきます」」


何から食べようか迷う。


唐揚げにハンバーグ、卵焼きにタコさんウインナー、コロッケまである。ちくわの中にはチーズが入っている。それだけではなく、ポテトサラダやトマト、キュウリやブロッコリーまで。


僕はまず卵焼きから食べることにした。


とても美味しい。


「もうひとつのお弁当におにぎりがあるからね」


そう言い彼女がもう一つのお弁当をあける。


「おにぎりには、鮭と梅干しと、昆布がはいっているの」


僕は驚いた。


「これ今日の朝一人で作ったのか?」


さすがにこの量は大変だったと思う。


「さすがに朝、一人では作ってないよ」

「昨日の夜に少し作り置きして、今日の朝に詰めたんだ」

「お母さんにも少し手伝ってもらったの」


へぇ〜、母と料理をするのは少し羨ましいな。


僕は少しそう思った。


「で、どう?」


彼女は僕にそう聞く。

答えはもちろん、


「美味しよ」

「おにぎりの種類も多いし、ポテトサラダが美味しい」


僕は正直にこたえる。


「ありがとう」


彼女は少し照れていた。

僕は彼女に質問する。


「でもさ、せっかくの体育祭なのにいいのか」

「ここで僕なんかと一緒に食べてて」


彼女は男女ともに人気がある。

しかも今日は体育祭だ。お昼ご飯を誘った人は少なくはないだろう。


「いいよ」

「お昼ご飯くらいはいつものメンバーじゃなくてもいいし」

「それに私が他の人とご飯食べてたら御薬袋くんのご飯はないよ」


本当だ!


「それは困るな」

「ありがとう」


僕は彼女にお礼を言った。

2人で食べ始めてそろそろお弁当がなくなり始めた頃、僕は一番聞きたかったことを聞く。


「さっきの借り物競争なんだけどさ」

「お題って何だったの?」


彼女はなかなか答えようとしない。

そんなに伝えにくいことなのか?


「い、いいたくない」


彼女は恥ずかしそうに言う。


「なんで?」


ただ、僕も気になる。


「言いたくないものは言いたくないんだよ!」


彼女は、相当言いたくないようだ。

僕が聞くと落ち込むようなことなのか?


「わかったよ。」


彼女を怒らせたくなかったのでしつこく聞かないことにした。


「そろそろ、休憩終わるから行こうか」


そう僕が言い、体育祭のお弁当タイムは終わる。



続く→

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