第8話 体育祭【前編】
7月上旬、体育祭当日。
「宣誓ー」
体育祭が始まった。正直に言うと中止になってほしかった。
こんな晴れた日に外で運動とか絶対にしたくない。学校を呪ってやりたい。
しかしこの学校には良い所がある。
普通なら3学期制で期末テストは3回、しかもその間に中間テストが入る高校が多い。が、うちの高校は違う。テスト範囲は広くなるが2学期制なので期末テストは夏前と冬に一回ずつの計2回、そして中間テストはないのだ。こんな学校はそうそう無いだろう。ありがとう校長先生。
そんな事を考えている間に選手宣誓が終わる。
そのあと準備体操やら先生の話を聞いて競技が始まる。
僕が出る競技はお昼の午後の部だ。
それまで暇だからテント後ろの方で携帯を触ることにした。
気づけば午前の最後の競技『借り物競争』だ
はじめは1年生かららしい。
ん?確か妹が出るっていってたな。そういえば皆には言ってなかったな、妹は僕とおなじ高校だ。
なかなか出てこないな、最後なのか?
お、出てきた。
「「ワァー」」
なぜかいきなり盛り上がる。
周りの声を聞くとちらほら名前が聞こえてくる。
その名前とは、『美咲』だ。僕の妹の名前だ。
僕の妹の名前は御薬袋 美咲(みない みさき)。美咲は容姿端麗、成績優秀、そしてとても性格が良く、運動もそこそこできるらしい。
クラス、いや学校で相当人気なのだろう。
僕からしてみれば美咲の性格の部分は【難あり】だがな。
それは、置いておいて競技が始まる。
美咲がカードを取るとすぐに誰かを探す。
周りがざわつく。
そして、2年A組のテントに向かってきた。
お題は『2年生』なのだろう。
美咲は満面な笑みで
「兄さん!」
美咲はそう言いながら僕の手を引っ張ってゴールを目指す。
終わった。
これは目立つとかそう言う問題ではない。
この刺される視線は5月の授業中にお腹がなった時の比ではない。
とてつもなく痛い、死にそうだ。
しかしここまで来たのならゴールを目指すしかない。
僕たちは1着でゴールした。
妹はとても嬉しそうだ。だが、僕は全く嬉しくない。なぜならテントに戻りづらいからだ。
「妹よ、家に帰ったら話がある」
「?わかった?」
生憎もっていた携帯だけをポケットに入れてクラスのテントではなく救護用のテントに向かうことにした。なぜなら僕は患者だから。受け入れてくれなくては困る。
そして僕は救護テントに受け入れてもらえなかった。僕は痛い視線を浴びながらクラステントに戻りすぐに携帯をさわった。
そして、借り物競争(2年生)が始まる。
競技は進み、
「「ワァー」」
と盛り上がる。多分緒方さんだろう。少し見ようとした時、今度は緒方さんが2年A組のテントに
走って来ているのが見えた。
嫌な予感しかしない。
僕は視線をすぐに携帯に戻す。
「来て!」
緒方さんはそう言った。それも赤羽くんに向かって。
僕は少し安心した。嫌な予感がはずれたと。
しかしそれは間違いだった。赤羽くんが動くと同時に緒方さんはテントの中に入り1番後ろの僕の腕
を掴んだ。
「え?」
僕がそう口にした時にはもう遅くテントから引っ張り出されていた。
これは、完全に詰みだ。
そう思いながら緒方さんと一緒にゴールを目指す。
ゴールしたあとテントの方を見ようとしたが見えるはずもない。わかるのだ。この刺されるような視線で。テントの反応が。
「ありがとう、御薬袋くん」
「うん」
「僕はこのままいつもの場所に行ってるから」
「わかった」
最低限の会話だけして僕はテントに戻れるはずもなくいつもの体育館裏に身を潜めるようにして向かった。
続く→
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