第7話 メッセージと電話

その日の夜


『競技何にするかきめた?』


一通の連絡がきた。


『玉入れかな』


『それはまたなんで?』


『一番人気がなさそうだから』


『なるほど』


『以外かも』


『それはまたなんで?』


『御薬袋くんなら一つも競技に出ないと思ったから』


『それができればそうしたいが...』


『できないの?』


『うん』


『そうなんだ、初めて知った』


『掲示板の紙に書いてあるぞ』


『そんなの書いてあった?』


『紙の一番下に小さく書いてある』


『ー 競技に参加しない生徒は実行委員の手伝いをする事 って』


『ずるっ!』


『去年これに引っかかった生徒が2,3人いたな』


『御薬袋くんは引っかからなかったんだ』


『うん』


話に一段落つくと電話がなった。


緒方さんからだ。


「もしもし」


「ごめんね、いきなり掛けて」

「こっちの方がメッセージ打つより楽だと思ったから」


「いいよ」


そう答える。


「緒方さんは何の競技に出るの?」


「私は借り物競争と混合リレーかな」


さすが緒方さんだ目立つ競技を2個も選ぶなんて、


「す、すごいね」


「そう?」


「なんでその競技にしたんだ?」


「混合リレーは赤羽くんに誘われたから」


赤羽 将人(あかばね まさと)彼はクラスの人気者だ。成績優秀、スポーツ万能、そしてイケメン

と来た。神は2物を与えないと言うが彼には3物与えている。不公平だ。



「そうなんだ」


「借り物競争はなんで?」


「借り物競争はね、なんかいろんな人に勧められたから。」


「あぁ、なるほど」


彼女は理解していないようだけど僕は理解した。

みんなチャンスを狙っているのだ。うちの学校の借り物競争は「物」というより「者」人を借りるのだ。毎回ある『好きな人』や『気になっている人』と言うお題、みんなこれを緒方さんに引かせ自分を選んで貰おうしている。『気になっている人』の場合、男子も女子も後でなんとでもはぐらかす事ができる。「友達としてー」とか「クラスメイトとしてー」と言えば良いのだから。


「まぁ、大変そうだけど頑張って」


「???うん、ありがとう?」


「もう遅いから今日は終わるか」


「そうだね」


「おやすみ」


「おやすみなさい」


電話がきれる。


「人気者ってたいへんだなぁ」


そう言い、僕は夢の中に入る。






〜少し〜


電話が切れたあと彼女、緒方香織はスマホを眺めていた。それはもうとても嬉しそうな笑顔で。





カチッ

音がなり326→325になる。

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