第3話 約束
「ねぇ」
「いつもお弁当だよね」
彼女はそう言って購買で買ったであろうパンを一口かじる。
「うん」
僕はそれしか答えられない。
「これ頂戴」
彼女はそうやっていいハンバーグと卵焼きを持って行く。
僕は何も言えないままハンバーグと卵焼きを見送る。
「うわっ」
「おいしい!!」
彼女はとても美味しそうに言う。
僕は気恥ずかしくなり、
「あ、ありがとう」
そう答えた。
「え?」
「何で御薬袋くんが恥ずかしがってんの?」
「お母さんの料理を褒められて嬉しいの?」
「マザコンなの?」
彼女は少し引きながらそう言った。
「マザコンじゃない!」
「あとそのお弁当は僕が作ったんだ」
彼女はとてもびっくりして
「そうなの!?」
「御薬袋くんって料理できたんだ!」
「すごい!」
僕は初めて家族以外に褒められて少し嬉しかった。
「でもなんでいつもお弁当なの?」
「たいへんじゃない?」
彼女の言うとおり少し大変だ。
だからといってお弁当を作らないわけにはいかない。
僕の親は今、海外に長期出張で家には父も母もいないのだ。
今は高校生(1個下)の妹と二人で暮らしている。
その妹に毎日購買でパンを食べさせるわけにはいかない。
ずっと健康で居てほしいから。
ん?僕は決してシスコンではないぞ、ただの優しいお兄ちゃんだ!!!
だから、僕は毎朝お弁当を作っているのは苦ではない。
「たいへんだけど嫌じゃないかな」
僕はそう答える。
「そうなんだ」
「そしたら明日から私の分も作ってきてよ」
は?なんでそうなる?
この話の流れからなぜ僕が緒方さんに弁当を作らないとけないのだ?
しかし僕が断れるわけもなく
「いいけど」
「でも食費が...」
流石に3人分を毎日となると食費がいつもよりかかってしまう。
「あ...」
「そしたらこうしよ」
「私は御薬袋くんにお弁当をつくるから、御薬袋くんは私にお弁当作って」
?????
彼女の言っている意味がわからない。
「それだと意味なくない?」
「だったら自分で好きなおかずを詰めたほうが良くないですか?」
僕は彼女にそう投げかける。
「私が御薬袋くんのお弁当を食べたいの」
「だけどそしたら御薬袋くんが大変だからお互いに弁当を作ってくればよくない?」
「いや、別に1人分増えたくらい大丈夫だから、たまに食費さえくれれば...」
僕がそう言うと
「い・い・よ・ね?」
彼女が圧力をかけてくる。
僕がそれに抗えるわけもなく、
「はい。わかりました。」
「よし、決定ね」
彼女はとても嬉そうだった。
「あと、さっきからタメ口と敬語が紛らわしいから私と喋るときはタメ口ね、これは絶対」
僕は悟った、これも断れないと。
「わかった」
僕は彼女とお弁当を作る約束をした。
カチッ
音がなり362→361になる。
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