天庭神話(設定補足:読み飛ばし可)

【天庭神話】

 この大陸には、『天庭神話』なる物語が存在する。その物語の冒頭でこの世界の成り立ちが語られている。


 神は、七日間でこの世界を創造し、四十九日の時を経て、今の世界のいしずえが出来た。

 最初の週。神は、虚無の空間に大きな光のたまと小さな土のたまを造った。後に、大きな球は、太陽となり、小さな土の塊は大地となった。

 第一週の最後の日。神は、作業に飽きてしまい、そのままお眠りになった。

 第二の週。太陽に温められた大地に変化が現れる。水分が分離し、海が出来た。

 第三の週。太陽の光で蓄えられた熱により、炎が生まれた。大地と海の温度差により風が生まれた。その週の最終日。大地と水、炎と風の精霊が生まれた。彼らは、お眠りになった神の仕事を引き継いだ。

 第四の週。海には生命が生まれ、大地には植物が生え始めた。その週の最後の日。魚や鳥、獣が生まれた。

 第五の週。空から落ちて来た小さな星に乗って昆虫がやって来た。

 第六の週。作業に退屈し始めていた精霊達が、いたずらで神に似せた人を創ってしまう。後に、彼らはこの事を後悔したという。

 第七の週。再び大地に星が落ちて来る。その星は、後に『黒き星』と呼ばれる事となる。その星は、先に振って来た星よりはるかに大きく、その衝突した衝撃で大地は裂け、火を噴いた。海は荒れ、巨大な波が地上のあらゆる物を飲み込んだ。空は陰り、世界は暗闇に包まれた。飛び散った大地の一部が空に飛び、やがてそれは、月となった。衝突の跡は、大きく隆起し、大陸となった。割れた黒き星の中からは、新たなる生物が現れ、その大陸から世界各地へと散って行った。この時現れた生物は、後に『魔物』と呼ばれる事となる。

 その週の最後の日。災害で生き残った生物達は、自分達の住処を取り戻すべく、魔物達と対峙する事を決めた。中でも交戦的であった人間を中心に、魔物との争いが始まった。

 その戦いは熾烈で全ての生物を巻き込む大戦となった。この世に生ける者全てが殺し合うその残忍な世界に、精霊達は、酷く落胆したという。この様な状況においても、神の眠りは深く、覚める事はなかった。そして、救済の無い残酷な世界が出来上がってしまった。その事に絶望した精霊達は、自らの力の源をこの地に振り撒いた後、どこか別の世界へと姿を消してしまったという。

 こうして、この世界には争いと僅かな精霊の加護だけが残る結果となった。


             *


 全能の神が眠っているから、善人の不幸が見過ごされる――との考えがある。

 この地に無神論者が多いのもこの神話に由来する。彼らは、神より精霊の加護を信頼する傾向にある。


 黒き星の衝突で出来た大地こそが『天庭スカイガルズ』と言われており、魔物降臨の地として忌み嫌われるようになった。何時しか人々は、その土地を『呪われた大地』と呼ぶようになった。


 その島は、四方を海に囲まれている上、海流は極めて荒く、島自体も周囲に隆起した山々で覆われている。その為、その島に近付くのは困難であり、他の大陸からは孤立している。冬に海が氷に覆われた時のみ、他の大陸と繋がる事がある。その時期に外敵に襲われる事もあった為、北側には自然の山脈を利用した巨大な人工の壁を造った。しかし、海が凍るのは、極めて気温が低い時期に限られる為、その状況でこの島に攻め込むのは容易な事でない。


 特殊な地形の恩恵で外敵から守られている一方、外部の情報や文化の流入も難しく、常に鎖国しているような状況である。それ故、この島は、独自な文化を継承する世界でも稀有けうな地域である。

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