第7話

 そこは、田舎の村ではあったが、一通りの施設がそろっている程度には発展していた。


「まぁ、当たり前と言えば、当たり前か。駅馬車が停まるくらいの村ではあるのだから――」


 私は、村を見回し、一人呟ひとりつぶやいた。


「さて、これからどうするか……。やはり、こういう時は、冒険者ギルドに向かうのがセオリーかしら」


 私は、ず、冒険者ギルドを目指して歩き始めた。


――領地境付近の村・冒険者ギルド――


「で、冒険者になりたいと」

「はい……」


 受付嬢のお姉さんは、少しあきれたような表情を浮かべていた。


「貴方、幾つ?」

「こ、今年で十六歳です。十六歳は、もう成人ですよね」

「まぁ、そうだけど――」


 受付嬢さんのうたがいの眼差まなざしが飛ぶ。


「身分証は何か持ってる?」

「いえ、ありません」

「じゃあ、保護者の方は?」

「いえ、両親は……、もうくなっています」

「それは、悪い事を聞いたわ。ごめんなさい」

「いえ」


 ――まぁ、うそは言っていない。彼の両親は、すでくなっていたはずだ。年も誤魔化ごまかしてはいない。彼は、おさなく見えても十六で、この世界では成人しているのだ。


「泊まる場所はあるの?」

「いえ、これから探すところです」

「はぁ~」


 受付嬢さんは、大きなため息を一つ吐いた。


「じゃあ、最初に行くべき場所は、ここじゃなくて、孤児院ね。紹介状を書いてあげるから、ず、そちらに行きなさい。そこで、管理人のおばあさんに許可をもらえたら、もう一度、ここに来てちょうだい」

「わ、分かりました……」


 私は、ていよく追い返されてしまった。私は、えず、孤児院に向かう事にした。


――領地境付近の村・孤児院――


大婆様おおばばさま、書類は、本物みたいです」


 メイドの格好をした女性が、おばあさんの代わりに私が渡した書類を確認する。


「すまないね。私は、目が悪いもんでね。もう一度、私にここに来た経緯を説明してもらえるかい?」

「ですから、両親を亡くして、仕事を探しにこの村にやって来たんです。それでギルドに行ったら、先にこちらへ行けと――」

「う~ん」

 ここの管理人であるおばあさんは、少し困っているようにうなり声を上げた。


「シンシア」

「はい」

「この子と二人っきりにさせておくれ」

「分かりました」


 メイドの格好した女性は、一礼すると部屋を出て行った。


「人っていうのは、面白くってね。目が見えなくなると、不思議な事に代わりの場所が敏感になるんだよ」

「はぁ……」

 私は、気の抜けた返事をした。


「貴方、うそを言っているね」

「えっ?」

 私は、おどろいた。そして、正直、かまをかけられているのではないかともうたがった。


 ――最初の時とおんなじだ。うそをつき続けるには、情報が無さ過ぎる。

 私は、観念かんねんして全てを正直に話した。


「ここの世界とは違う『異世界』からやって来て、しかも、貴女は、女性だと――」

「はい、そうです。この話をさせてもらうのは、貴女で三人目になります」

「信じがたい話だけど、今度は、うそは言っていないようだね。他の子と同じようにひとち出来るまで、ここに居ると良いよ。ただ、持ち出した剣とお金は、返さなきゃダメだよ」

「わ、分かりました……」

「それから、冒険者になる事も許可するよ。才能があるみたいだからね。正直な話、ここの運営もきびしいからね。貴女みたいに才能がある人には、働いてもらわないと」

「それは、こちらとしても、そうさせていただきたいです。あまりご迷惑めいわくはかけたくありませんので」

「そうだね。じゃあ、話は、これで終わりだ。悪いけど、手を貸してくれるかい?」

「あ、はい」

「小さな手をしているね……。こんな子に無理はさせたくはないのだけれどねぇ……」

「お気遣きづかいなく。中身は、いいとししてますから」

「そうだったね」

 私は、おばあさんの手を引いて部屋の出口へと向かう。


「シンシアや、話は終ったよ」

「はい、今、行きます」


 こうして、私は、冒険者になる事が出来た。

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